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薄暗い室内には人が集まり
あっという間に人口密度がすごいことになる。
「Aちゃん！」
人波に押されて、健二郎くんとの距離が離れていく。
奥に押されるにつれて
近くなる舞台との距離。
男から目が離せない私は
ただ、遠いところに意識を置いて
耳にはいる心地よい声に身を委ねていた。
…とろけそう。
私の名をよんだあの声を思い出して赤面しては
私の周りであの男に夢中になっている女の子たちに
ちょっとした優越感なんかも覚えたりする。
曲が終わって
あっさりと裏口へ引っ込む男に
アンコールと、女性陣の悲痛な叫びが会場に広がる。
「やばーかっこいい！あの人なら遊ばれてもいい！」
「あの声で耳元で囁いてほしいー！」
舞台に出て一曲披露しただけなのに
一気にここの女性陣が自らを捧げても構わないと思えるまでに、
あの男はたくさんの女を魅了してしまったみたいだ。
とにかく人混みから抜けて
健二郎くんか直人、探さなきゃ。
とりあえず壁際を目指した。
あの男のことはできる限り考えてはいけない。
帰らなきゃ。
その時。
黒いカーテンで仕切られたスタッフブース。
強く腕が引かれた。
「…っ、強引すぎない？」
「驚かないんだ、これも想定内？怖いなーおねーさん」
期待していた。
馬鹿みたいだけど
あの歌は私の心に刺さり
そしてもしこれが私のためにされたことならまずい
間違いなく私、この男を特別視してしまう。
だから帰らなきゃと、思ったのに。
それが現実となって
心の中ではドキドキで倒れそうだし
嬉しさで胸がきゅうとなるのに
その弱みは見せてはならないと
私の態度は硬化したまま。
だけど多分、この男は気付いてる。
今日は私の負けだってことを。
「ここには何しにきた？」
「…友達に、誘われて」
「さっき一緒にいたのって彼氏？」
「まだ、違う」
「てことはいずれそうなるんだ？」
「…多分、そう」
「じゃあ俺、邪魔していい？」
カーテン奥のスタッフブース。
布一枚隔てた向こうでは賑やかな声が聞こえるのに
この狭い空間は、ふたりきり。
男の顔が近付く。
「あぁ、許可なんかいらねぇけど」
唇が触れそうな距離で、止まる。
「…欲しい？」
「っ…別に」
「欲しいって言えよ」
やっぱり今日は私の負け。
私の"欲しい"を合図に
私の唇は彼のそれで塞がれた。
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ひろみ - 私も臣大好きなので、キュンキュンしながら読みました。どうなるの？とドキドキで、途中でやめる事ができず、夜中までかかって一気に読ませて頂きました。 (2017年4月2日 2時) (
レス) id: e9c7ef6696 (このIDを非表示/違反報告)
苺(プロフ) - 3~しかないんですかね??間違ってたらごめんなさい (2017年1月8日 15時) (レス) id: 811aaed8b2 (このIDを非表示/違反報告)
あんな(プロフ) - 毎回毎回キュンキュンしながら見てます！！ (2016年9月19日 0時) (レス) id: 16f1420843 (このIDを非表示/違反報告)
maimai(プロフ) - 続きが気になりすぎます(*^^*)！NEEさんのお話大好きです＼(^^)／NEEさんのペースで大丈夫ですので、無理せず更新お待ちしております(*^^*)！ (2016年5月22日 10時) (レス) id: 31f7cf4807 (このIDを非表示/違反報告)
maimai(プロフ) - あとさんと同じく！隆二くんに触れられてるところを見て、臣にいろいろ大切なことに気づいて欲しいです(>_<) (2016年5月22日 10時) (レス) id: 31f7cf4807 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：NEE
| 作成日時：2016年4月14日 22時
