mission 9 ページ9
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「おまっ……え」
後から走ってきた店番が俺を連れ出そうとするが、目的の人物がいたからにはここで引き下がるなんてあり得ない。
むしろ、ラッキーだ。
「ん？こいつ？」
俺の視線をなぞってあいつの隣に座っていた奴が指差した。
そっと頷く。
「制服だし……学生さん？」
見た目のわりにはそこら辺にいるチンピラよりずっと丁寧な口調で話すその人は、「三樹矢」とあいつを呼んだ。
「……なんだよ高木。せっかく深い眠りに就けたってのに」
「ほら」
「……え？」
高木というのかあいつの顔をくるりと俺に向け、寝起きのあいつに状況を説明した。
周りのホストは何事かと俺らの会話を端から見ているだけだ。
「なんか用？」
「は？」
「未成年がこんな時間にこんな店来ちゃいけない。まだ開店前だし」
当たり前だ、と何も言えなくなる。
まだ学校帰りのスーツ姿のまま高級そうなソファに眠っていた。
隠すつもりはなかったのか、俺がいても驚かないなんて正直こっちが調子狂う。
メガネを外したあいつを見たのは今日で２度目だ。
だけどホストやってるだけあるっていうか……とにかく男の俺でも息を呑むほどの美形がそこにはあった。
女はこういう魅力に敏感なんだろう。
今になってやっと、こいつがキャーキャー言われている理由を正確に理解した。
ただ今のあいつは、「三樹矢」らしい。
「で？俺着替えなくちゃならないから手短に」
「ええっと……」
「……はぁ。行くよ？」
俺だとわかっているのかいないのか。
迷惑そうな目を俺に向けるあいつ。
本当にあいつなのか不安になるくらいだ。
「薮先生、ですよね」
意を決して声をかけたのが吉と出るか凶と出るか。
普段は呼びもしない“先生”呼びをしてやったんだ。
こんなときくらい、本性を見せてくれたっていいじゃねぇか。
「……薮？誰それ」
俺の苦労も空しく、質問が躱された。
立ち上がるとスラッとした手足が強調されて、オーラが際立った。
半笑いの状態で目だけは笑っておらず、初日の自己紹介の日も同じように見られてたことを思い出す。
ゾクッと背筋が凍りついた。
「三樹矢。お客様には優しく。だろ？」
「金持ってるなら客として見てやってもいいけど？」
「ふーん？確かに。君、金がないなら今すぐ出てった方がいい。君のためにもね」
脅しとも取れる言葉だったけど、それなりに心配されている。
だけどすみません。
「俺……」
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作者名：柊 | 作成日時：2018年10月12日 19時
