mission 41 ページ41
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「八乙女。目が合ったから聞くけど」
俺嘘とか無理だから!
すぐバレる体質だし。←
てか他からの視線がこえーよ!
「寄って集ってなにやってんだ?」
俺の話もロクに聞かないでなにやってんだ?と。
そういうことだろ?
俺でも分かるわ、こんなもん。
「え、えとっ……」
意図せず目が泳ぐ。
知らねぇし。大ちゃんが悪いんだし!
そう思って大ちゃんを見るけど、潤んだ瞳で見つめてくるから咄嗟に逸らした。
おい卑怯だぞ!
「そんなに疾しいことしてんのか?」
いやどうしてそうなるんだよ!
チョークを桟に置き教卓に両手を突いてじっくり一周、俺らを見つめた。
うわ。女子が悲鳴を上げそうになって口を手で覆ったよ。
やっぱイケメンって違うわ……。
って、薮をイケメンって認めたわけじゃねぇよ!←
「……んま、いいや。ほら元の席戻って」
薮は気づいたのか?
最後にまた俺を見て、黒板に向き直った。
「じゃあ有岡。今書いたこの文章の空欄に言葉を入れながら全文読んでみて」
「ええっ!!」
教室中に笑いが起こる。
俺も思わずクスリ。
大ちゃんをここで指名するとか、絶対分かってんだろ薮。
「笑ってるけど、皆にも後でやってもらうから」
一瞬で冷えた空気の中、一人、薮は笑っていた。
……いや、ほくそ笑んでいた。
……って、え!?笑った!?
「わ、笑った……」
あまりに唐突すぎて、言葉にならなかった。
それを代弁してくれた前の男子も口をあんぐり開けて固まっている。
大ちゃんなんか椅子に立ち上がりかけている。
「ん?、、……っあ」
薮も今気づいたのか「やっちまった……」みたいな顔してる。
いやいや、俺らもそれなりに驚いてるよ?
こんなに呆気なく薮の笑顔が作れるなんて、さっきまでの努力はなんだったんだ、っつー話だし。
「薮ちゃん、可愛い……」
女子の誰かが呟いた。
確かに、薮のあんな顔初めて見た。
目をこれ以上ないくらい細くして、ふにゃり、って効果音が似合いそうな笑顔だった。
俺だって、まだ意地悪な表情しか見たことなかったのに。
「なんか、悔しい……」
薮に可愛いコールを続けている女子。
他の男子もやられた、って言いたげだ。
あれじゃあ彼女を薮に取られても仕方ない。
「俺便所行く」
前の奴に声を掛けて一人屋上に向かう。
なぜだか苦しいこの訳を、誰かに教えてほしかった。
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作者名:柊 | 作成日時:2018年10月12日 19時