mission 34 ページ34
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俺は何度、薮から逃げれば済むんだ。
こんなどうでもいいことを悶々と考えながら店を飛び出した。
途中、高木みたいな人とすれ違ったけど、声を掛けられなかったから無視をすることに決めた。
「どうすっか……」
荷物は休憩室に置いてきたままになっているし、制服だし。
それに、さっきみたいにまた薮に助けられるなんてこと、もう勘弁だ。
誰にも追われない所を探しているうち、もう１ヶ月は行っていない場所が思い浮かんだ。
「あのボロビルならっ」
もう何遍も通っている道。
ここからだってすぐ分かる。
数分かして、目的地に到着。
辺りは静寂に包まれている。
立ち入り禁止の柵を飛び越え、あの夜と同じように錆びれた外階段を息が切れるまで登っていく。
そうしているうち、視界が開けて屋上に着いたことが判明する。
「久しぶり。俺の居場所」
まだ肌寒い風が吹き抜ける。
ボロボロで赤錆だらけなのに、屋上の柵だけは頑丈な作りになっている。
俺みたいに「死にたい」って思ってる人用なのかな。
「なんで死にたいのか、分からないで死ぬのもあれだなぁ」
自問自答なんてもんじゃない。
これはただの独り言。誰かに聞いてほしいだけ。
「涼しい……」
誰にも知られないように最期を遂げるのなら、飛び降りるよりここで凍え死んだ方が良さそだ。
生憎、雪や雨なんてものは降ってくれやしないけれど。
「……帰りたくねぇなぁ」
でもなんだかんだ言って、伊野ちゃんを一人にするのは心配っていうか、今まで育ててきてくれたのに申し訳ないというか。
「死にたくない、わけじゃないんだよなぁ」
寝転がって頭上を見上げてみれば、いつも通りの曇った群青色の空が覆っている。
あんな風に、堂々といれたら良いのにな。
「光くん？」
びっくりして勢いよく起き上がると、少しだけくらっときた。
眩暈かも。急に起きすぎた。
「高木……。なんでここに」
「追いかけて来たんだよ。部屋から出る時、俺とすれ違ったの覚えてない？」
「……あぁ」
あれは高木だったのか。
似てるな、としか感じなかったけど。
「興味ない、か。……じゃあ三樹矢の傷についてなら、食いついてくれる？」
「教えてくれんの？なにがあったか」
「やっぱり食いついた笑。全部見たってわけじゃないけどね。アバウトに、だよ」
そして高木は話してくれた。
薮は、店の見世物なんだと。
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作者名：柊 | 作成日時：2018年10月12日 19時
