mission 28 ページ28
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「薮……っ、なに泣いてんだよ」
意識の無い薮の頰に伝う、一筋。
その傷も。涙も。
日を追う毎に薮の弱さが公になる。
「……やっぱり、俺もお前も、同類だな」
何があったんだか、そんなことは分からない。
いや、分かりたくもない。
ただ知ってしまったら、こいつの弱さを感じてしまいそうで。
それが、怖いだけだ。
「光くん。今日どうする?このままいる?」
「あ、えっ、と、、」
「そんなに俺影薄い?驚き過ぎじゃない?」
本気で悩んでいるようにも見えるけど、高木はきっと、この空気を変えたいだけなんだろう。
「薄い」
「即答されるのもそれはそれで傷つくけどさ、よく考えて言われるのもあれだよね」
「じゃあどう言えばいいの」
「うーん。……言わないで」
「女子か」
薄笑いをした後、やがて静かになった。
「何があったの」
これだけは、知りたかった。
明日は平日だし、学校にだってこの傷は隠して行かなきゃならない。
「嘘でいいから、なんか言ってくれよ」
……っていうのも、エゴになるんだろうか。
本当は、薮という名前のこいつを知る俺らの中で、自分だけが知っておきたいだけなんだ。
「……でもっ」
薮が高木を必要としている理由が分かるような気がした。
子供も大人も区別しないところとか、そんなとこが。
「たか、き……?」
「薮!?」
目が覚めた薮。
傍に座っていたからか、ソファに乗せていた俺の手を無造作に掴んだ。
俺は地味に引っ張られて、変な体勢で固まることしかできない。
「三樹矢、その手は光くんだよ」
「ぅえっ、!」
「その反応傷つく」
「ちょっ、なんで八乙女が!」
「また来ちゃったんだよね?居酒屋行く前に会ったから連れてきた」
突然起き上がった薮。
頭を痛そうに抱えてたけど、どこか打ってんのか?
「……っ、くそっ」
「薮?」
「なんで、帰さなかったんだよ」
荒い息遣いで高木を睨みつける。
見つめられてなにも出来ない高木を、俺はただ見ているだけだ。
「ま、待ってくれよ!俺が悪いんだ。すぐ帰るから」
「三樹矢、別にいいだろ。一人くらい味方がいた方が──」
「味方なんて……高木だけで充分だ」
俯き、右肩を不自然に摩っている薮。
さっきから、頭とか肩とか……あれか?喧嘩か?
「……帰れ」
「っ、……でもっ」
「いいから帰れよっ!」
その声に追い出されるように、気づけば走り出していた。
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作者名:柊 | 作成日時:2018年10月12日 19時