mission 19 ページ19
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俺と中島せんせが話し終わったところで、保健室の戸が開いた。
具合の悪い生徒だったら邪魔になるだろうと思って、俺は急いで退こうとしたのだが──
「あーいたいた」
「へ?」
不意に掴まれた手。
長い腕を辿って見上げれば、そこにいたのは大嫌いなあいつだった。
「げっ……」
「その反応傷つくなぁ」
真顔で中島せんせに会釈した薮は俺を引っ張って保健室を出た。
「ふふ。お大事に」
俺がサボっていたのを誤魔化しているつもりなのか、先生はけらけらと笑っている。
俺にとっては緊急事態なんすけど。
「……いい加減手離してもらえます?」
「なんで?」
「なんでって……」
疑問を疑問で返されて答えに詰まる。
昼休みで廊下に誰も人がいないのは分かるけど、なんだって学校で教師に連れ回されなくちゃいけないんだ。
しかもよりによって、薮だぞ!?
「今日の俺の授業、すっぽかしただろ」
うわぁ。忘れてた。
結局午前の授業を丸々休んでしまった俺。
薮の授業があったなら出ておけばよかった。
「あれ?光くん!」
……そしたら、少なくともこんなことにはならなかった筈だ。
「大、ちゃん」
「そんなところで何してるの?」
早く食べないと昼終わっちゃうけど。
生憎大ちゃんの今の位置からは薮が見えていないらしい。
俺が上手く言い繕うしか方法はなさそうだった。
「ごめん、急に用ができて」
「用って?」
「や──せ、先生に、呼び出されちゃってさ」
「そうなの?」
なら仕方ないかぁ。
「サボったのバレたんでしょ」とはにかんで許してくれた大ちゃん。
いいヤツだ。後でなんか奢るわ。
「うん。ごめん」
「気にしてないから。早く行ってきちゃいなよ」
大ちゃんの方が先に教室に戻ってくれて助かった。
薮の手がギリリ、と手首を痛め付けている。
「……離せよ」
「サボった罰。俺に付き合え」
手を離したはいいものの、足早に進んでいく薮。
なんだよ。てか腹減ってんだけど。
「ほれ、入って」
背中を押され入った資料室。
ここって、生徒は立ち入り禁止じゃ……?
ガチャン、と派手に音を立てた引き戸に肩が上がる。
今から一体、何をするんだろうか。
「一つ、聞いていいか」
向かい合わせになって座った。
薮の瞳に歪んだ俺が写る。
「昨日、どうしてあの街にいたんだ」
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作者名:柊 | 作成日時:2018年10月12日 19時