検索窓
今日:3 hit、昨日:1 hit、合計:75,862 hit

mission 19 ページ19

.


俺と中島せんせが話し終わったところで、保健室の戸が開いた。

具合の悪い生徒だったら邪魔になるだろうと思って、俺は急いで退こうとしたのだが──



「あーいたいた」

「へ?」



不意に掴まれた手。

長い腕を辿って見上げれば、そこにいたのは大嫌いなあいつだった。



「げっ……」

「その反応傷つくなぁ」



真顔で中島せんせに会釈した薮は俺を引っ張って保健室を出た。



「ふふ。お大事に」



俺がサボっていたのを誤魔化しているつもりなのか、先生はけらけらと笑っている。

俺にとっては緊急事態なんすけど。



「……いい加減手離してもらえます?」

「なんで?」

「なんでって……」



疑問を疑問で返されて答えに詰まる。

昼休みで廊下に誰も人がいないのは分かるけど、なんだって学校で教師に連れ回されなくちゃいけないんだ。

しかもよりによって、薮だぞ!?



「今日の俺の授業、すっぽかしただろ」



うわぁ。忘れてた。

結局午前の授業を丸々休んでしまった俺。

薮の授業があったなら出ておけばよかった。



「あれ?光くん!」



……そしたら、少なくともこんなことにはならなかった筈だ。



「大、ちゃん」

「そんなところで何してるの?」



早く食べないと昼終わっちゃうけど。


生憎大ちゃんの今の位置からは薮が見えていないらしい。

俺が上手く言い繕うしか方法はなさそうだった。



「ごめん、急に用ができて」

「用って?」

「や──せ、先生に、呼び出されちゃってさ」

「そうなの?」



なら仕方ないかぁ。


「サボったのバレたんでしょ」とはにかんで許してくれた大ちゃん。

いいヤツだ。後でなんか奢るわ。



「うん。ごめん」

「気にしてないから。早く行ってきちゃいなよ」



大ちゃんの方が先に教室に戻ってくれて助かった。

薮の手がギリリ、と手首を痛め付けている。



「……離せよ」

「サボった罰。俺に付き合え」



手を離したはいいものの、足早に進んでいく薮。

なんだよ。てか腹減ってんだけど。



「ほれ、入って」



背中を押され入った資料室。

ここって、生徒は立ち入り禁止じゃ……?


ガチャン、と派手に音を立てた引き戸に肩が上がる。

今から一体、何をするんだろうか。



「一つ、聞いていいか」



向かい合わせになって座った。

薮の瞳に歪んだ俺が写る。



「昨日、どうしてあの街にいたんだ」


.

mission 20→←mission 18



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (153 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
221人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2018年10月12日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。