38.自室 ページ38
疲れた。
夕飯の時、ショッピさんとしんぺい神さんの間に置いてもらったはいいものの、向かいにゾムさんが来ることは避けられず。いくらご飯が美味しいとはいえ、やはり昨日と同様に半分ずつが限界で、箸を置こうとしたところで向かいから止められた。
まだ食えるやんな、といい笑顔で告げられた言葉に必死に首を横に振ったが、なんならあーんしたるよ、と机を回り込んで来そうになった彼をどうにかこうにか言い包めて、残りはショッピさんに食べてもらった。
しんぺい神さんからは胃薬を貰った。
自室のベッドにうつ伏せに倒れ込み、ぼんやりと思考する。
ここに来て二日、全然動いてない。回してるのは頭ばかりで、そろそろ運動しなければ体が鈍ってしまう。けれど私の実力に関して知っているのはグルッペンさんとトントンさんだけで、流石にいきなり相手してほしいだなんて言えないし、そんな所を誰かに見られては面倒だろうし。
さてどうしようかと思っていれば、ふと後ろ髪が揺れた。
「……」
三つ数えると同時、ベッドの反発を利用して右に体を流しながら跳ね起きる。力を込めて勢いよく廻した右脚が、鈍い音と共に受け止められた。恐らく腕であろうそれを蹴って後方に飛び、ナイフを取り出しながらくるりと空中で回って床に着地する。
「……んふ、ほんまに強いねんな、興奮するわ」
正面に立っていたのは、ゾムさんだった。彼が背にした窓は開け放たれており、そこから入ってきたんだろうということはゆうに予測できる。二階に登るくらい造作もないだろう、お誂え向きに窓の外には大きな木があるわけだし。
「な、お、俺が来てんの、なんでわかったん？」
「通風口とは明らかに違う方向から風が来たので」
「！ な、な、俺と手合わせしてや」
「……今、ですか？」
「ん！」
彼が何の武器も手に持っていないことを確認し、ナイフを仕舞って立ち上がる。外はもう真っ暗になっていて、勝手の知らない演練場を使うには些か不安があるのだけれど、なんて考えているうちに手首を掴まれた。
「な、行こ！ なんならシッマとシャオロンも呼ぶで！？」
「それは遠慮します、……が、私はまだここの一員ではありませんし、勝手に演練場等を使う訳には参りません」
「せやったらトントンに許可取りに行く！」
「こんな時間にお邪魔しては御迷惑になりますから……」
「Aは俺に連れてこられたってことにしたったらええねん、俺やったら大丈夫やから行こ！」
「いや、ゾム様……」
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陽乃(プロフ) - 黒猫さん» コメントありがとうございます、黒猫様の御趣味に添えられたようで嬉しい限りです。続編ものんびり書いておりますので、楽しんでいただければ幸いです。 (2020年5月29日 16時) (
レス) id: 89afdb7f98 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫 - 全て見させていただきました。俺はこういう作品が好きなので、とてもいい気持ちになりながら見ていました。神作品をありがとうございます。 (2020年5月21日 10時) (レス) id: 0779f5a88d (このIDを非表示/違反報告)
陽乃(プロフ) - （名前）さん» コメントありがとうございます。建物の設定は実在する基地や城塞、そして仰る通り大脱走など御本人たちの動画を参考にした部分もありますね。気づいてくださって嬉しいです。 (2020年4月12日 21時) (レス) id: 4760b364cd (このIDを非表示/違反報告)
（名前） - 9の途中まで見ました〜なんかPX、商店、、かな？みた途端、大脱走元にしてるんかなって思ったーーー！！実際どうですか？本当に大脱出が元だったら、、違うくても、話の作り方、うますぎる… (2020年4月12日 19時) (レス) id: ca685f05f7 (このIDを非表示/違反報告)
陽乃(プロフ) - 黒胡椒さん» コメントありがとうございます、のんびり更新していきますのでよければお付き合いください。 (2020年4月4日 3時) (レス) id: 4760b364cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：陽乃 | 作成日時：2020年3月16日 17時
