24.食堂 ページ24
思考は纏まらないまま、彼らに連れられて食堂に着く。こちらを見たしんぺい神さんはぱあっと明るい顔をして、私を呼びながら手招きをした。といっても雑面で遮られているので、明るい顔をしている気がした、というだけだが。
「俺の隣おいでよ、いつも空いてるから寂しかったんだよねえ」
「やって神の隣座ったらすぐケツ触られんねんもん」
「ロボロ何か言った？」
「何でもないですその手やめて！！」
手を軽く握り、人差し指と中指の間から親指を出して見せたしんぺい神さんがにっこりと笑う。手招きされるまま彼の隣に腰を下ろしたものの、そのハンドサインの意味が分からずに正面にいたエーミールさんを見やると苦笑を返された。
「……？」
「あれはフィグ・サインと言いまして……まあ、あまり良い意味ではありませんから、Aさんは使わないようにしてくださいね」
「はい」
「うん、いい返事です」
やっぱり今世も、エーミールさんは教職に就いていたんだろうか。教師のようなその言葉がどこか擽ったくて、思わず口元が緩む。
「ひとらん、今日のご飯何？」
「今日はねえ、鮭と生姜の炊き込みご飯と、豆腐とわかめのお味噌汁と、牛蒡のサラダにかぼちゃの煮物」
シャオロンさんの問いかけに真後ろから答えが返されて、思わず肩を揺らして振り返る。ひとらんらんさんは手に持っていたお盆を私の前に置き、マスクをずらして微笑んだ。
「食べ切れなかったり足りなかったりしたら、誰にでもいいから言ってね」
「ありがとうございます、……あの、これ、ひとらんらん様がお作りになったんですか？」
「うん、……あ、見たことないかな、これ和食って言ってね、俺の出身の極東の料理なんだ」
知ってます、という言葉を飲み込んで、よかったら感想教えて、と言う彼に微笑み返した。
まさか和食が食べられるとは思っていなかった。確かに美味しそうだし、懐かしい香りも心地いい。
ひとらんらんさんが席に着き、皆の前に料理が並べられていることを確認して頷いた。
「よし、じゃあ、いただきます」
いただきます、と声が重なって、私も手を合わせてそっと声を出す。何年ぶりだろうか、こんな風に食卓を囲むのも、挨拶を口の中で呟くのではなく、きちんと言葉にするのも。
隣でしんぺい神さんが、正面でエーミールさんが料理に箸をつける。お味噌汁に手を伸ばして一口含むと、やはり懐かしい味がして、ほうっと息を吐いた。
毒も入ってはいなさそうだ、なんて、考えたくないけど。
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陽乃(プロフ) - 黒猫さん» コメントありがとうございます、黒猫様の御趣味に添えられたようで嬉しい限りです。続編ものんびり書いておりますので、楽しんでいただければ幸いです。 (2020年5月29日 16時) (
レス) id: 89afdb7f98 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫 - 全て見させていただきました。俺はこういう作品が好きなので、とてもいい気持ちになりながら見ていました。神作品をありがとうございます。 (2020年5月21日 10時) (レス) id: 0779f5a88d (このIDを非表示/違反報告)
陽乃(プロフ) - （名前）さん» コメントありがとうございます。建物の設定は実在する基地や城塞、そして仰る通り大脱走など御本人たちの動画を参考にした部分もありますね。気づいてくださって嬉しいです。 (2020年4月12日 21時) (レス) id: 4760b364cd (このIDを非表示/違反報告)
（名前） - 9の途中まで見ました〜なんかPX、商店、、かな？みた途端、大脱走元にしてるんかなって思ったーーー！！実際どうですか？本当に大脱出が元だったら、、違うくても、話の作り方、うますぎる… (2020年4月12日 19時) (レス) id: ca685f05f7 (このIDを非表示/違反報告)
陽乃(プロフ) - 黒胡椒さん» コメントありがとうございます、のんびり更新していきますのでよければお付き合いください。 (2020年4月4日 3時) (レス) id: 4760b364cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：陽乃 | 作成日時：2020年3月16日 17時
