18.医務室 ページ18
「あ、そうそう、シッマもげどちゃんも腕怪我しとる」
「はいはい見せて、また内ゲバ？」
「だってさあ、何回言ってもコネちゃんが俺の畑荒らすんだもん」
「シャオロンとゾムもやんか！」
「僕に至っては何もしてへんのに巻き込まれとるからね、ゾムさん餌にして逃げたけど」
「それ夕飯食害コースじゃない？」
「今日シッマにひっついて食べるから大丈夫」
「おいやめろや」
ひとらんらんさんは擦り傷、コネシマさんは恐らく刀傷。隅の椅子に戻って手当の様子を眺めていると、暇になったらしい鬱先生がこちらに近寄ってきた。
ここ座ってええかな、と近くの椅子を示されたのでこくりと頷く。
「さっきぶりやなあ、僕のことわかる？」
「はい、鬱様」
「覚えてくれてんな、嬉しいわ」
へらりと笑う彼はやはり女性慣れしているようで、どこか距離が近いように思える。きちんと視線を合わせたり小首を傾げたりといった、細かい仕草のせいだろうか。
「さっき、ペ神と何してたん？ 襲われてへん？」
「いえ、先に脚に怪我をしていたもので、しんぺい神様が傷の具合を診てくださったんです」
「あらら、怪我は大丈夫なん？」
「はい、もう痛みもありませんし、いつも通り動けますから」
「ならよかったわ」
誰かに変なことされたら僕に言ってな、と微笑みながら左手を握られた。手の甲を少し荒れた指先で撫でられて、言動のギャップに思わず瞬きをした。どちらかと言えば、それは。
「今まさに変なことしてるくせに何言ってんの」
べし、とその頭を後ろから叩いたのはしんぺい神さんで、見れば二人の治療は終わったようだった。ほら帰った帰った、と雑に追い出される直前、ひとらんらんさんはぺこりと会釈を、鬱先生はひらりと手を振り、コネシマさんはちらりと視線を寄越すだけに留まった。私は小さくお辞儀をして、ドアが閉まる音を聞いてから姿勢を戻す。
「さて、今治療がいる傷は腕のだけっぽいね」
「あ、はい」
「包帯とか替えるから、……そうだな、明日からもこの時間、夕飯の前においで」
「お世話おかけします……」
「いいのいいの、あとこれ、まあ気休め程度じゃあるんだけど、傷痕を薄くする軟膏」
「そんな便利なものがあるんですね」
「うん、お風呂上がりとか寝る前とかに塗ってね」
右肩と左の脇腹、左足首と太腿の傷は絶対、と。特に酷かった傷を言い当てられてこくりと頷いた。
「ん、それじゃあ終わり！ そろそろご飯だし、食堂行こうか」
「……ごはん」
「うん、ご飯」
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陽乃(プロフ) - 黒猫さん» コメントありがとうございます、黒猫様の御趣味に添えられたようで嬉しい限りです。続編ものんびり書いておりますので、楽しんでいただければ幸いです。 (2020年5月29日 16時) (
レス) id: 89afdb7f98 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫 - 全て見させていただきました。俺はこういう作品が好きなので、とてもいい気持ちになりながら見ていました。神作品をありがとうございます。 (2020年5月21日 10時) (レス) id: 0779f5a88d (このIDを非表示/違反報告)
陽乃(プロフ) - （名前）さん» コメントありがとうございます。建物の設定は実在する基地や城塞、そして仰る通り大脱走など御本人たちの動画を参考にした部分もありますね。気づいてくださって嬉しいです。 (2020年4月12日 21時) (レス) id: 4760b364cd (このIDを非表示/違反報告)
（名前） - 9の途中まで見ました〜なんかPX、商店、、かな？みた途端、大脱走元にしてるんかなって思ったーーー！！実際どうですか？本当に大脱出が元だったら、、違うくても、話の作り方、うますぎる… (2020年4月12日 19時) (レス) id: ca685f05f7 (このIDを非表示/違反報告)
陽乃(プロフ) - 黒胡椒さん» コメントありがとうございます、のんびり更新していきますのでよければお付き合いください。 (2020年4月4日 3時) (レス) id: 4760b364cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：陽乃 | 作成日時：2020年3月16日 17時
