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だから、ナイフを捨てました。両手を上げて立ち止まって、トントン様に引き倒されました。侵入経路を吐きました。目的を吐きました。前世のことは隠して、ただ、友人が総統閣下に救われたのだということだけを吐きました。
殺してほしいと申し上げました。
総統閣下は、私がトントン様を出し抜けたであろうことが、お気に召されたようでした。彼の人の下につく気は無いかと尋ねられました。思ってもいない僥倖でした。勿論そうしたいと答えました。しかしそう簡単に事は運ばないでしょうから、一つ提案を致しました。
周辺諸国で秘匿されている……まあ公然の秘密といったところなのですが、その暗殺者をお雇いになる気はございませんか、と。これまでの国で得た情報を全てお渡しし、何処の誰でも殺しましょうと。
総統閣下は、その返答もまたお気に召されたようでした。
試験的なものを設けるおつもりのようで、私に監視の方をつけると仰いました。与えられた暗殺任務をこなし、その方が私がいることの利を認めれば、幹部にしようと仰いました。
私は、それを受け入れました。
今がその試験の最中で、総統閣下が紹介してくださった私の経歴は、働き口以外の全てが嘘なのです。何でしたら私の名前すら嘘なのです。前世の私は一般人でしたが、今世の私に名前などありませんでした。依頼を受ける際に困ったので便宜上付けた呼び名なのです、名前などではないのです。
私は、幹部の皆様を騙している。
口を閉じた時には、既に治療は終わっていた。
「よく使われる手口だよね、最初の一言が嘘」
「はい」
「……全部嘘？ 全部本当？」
しゅるりと、しんぺい神さんが雑面の紐を解く。
現れた瞳が真っ直ぐにこちらを見据えた。視線を逸らす気も、それに答える気も起きなかった。
「Aちゃん」
「はい」
「ここで、グルッペンの下で、俺たち幹部と一緒に最期を共にする気はある？」
「ここで、生きたい？」
訥々と喋るうちに固まったのは、たった一つ、単純且つ明快な私の気持ちだった。
それは恐らく前世の私の気持ちだったが、今世の私はそれにデメリットを見出すことはなかったから、きっとそれでいいのだと、改めて思った。
「皆様のお役に立てるのなら」
それが、私の最大幸福だ。
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陽乃(プロフ) - 黒猫さん» コメントありがとうございます、黒猫様の御趣味に添えられたようで嬉しい限りです。続編ものんびり書いておりますので、楽しんでいただければ幸いです。 (2020年5月29日 16時) (
レス) id: 89afdb7f98 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫 - 全て見させていただきました。俺はこういう作品が好きなので、とてもいい気持ちになりながら見ていました。神作品をありがとうございます。 (2020年5月21日 10時) (レス) id: 0779f5a88d (このIDを非表示/違反報告)
陽乃(プロフ) - （名前）さん» コメントありがとうございます。建物の設定は実在する基地や城塞、そして仰る通り大脱走など御本人たちの動画を参考にした部分もありますね。気づいてくださって嬉しいです。 (2020年4月12日 21時) (レス) id: 4760b364cd (このIDを非表示/違反報告)
（名前） - 9の途中まで見ました〜なんかPX、商店、、かな？みた途端、大脱走元にしてるんかなって思ったーーー！！実際どうですか？本当に大脱出が元だったら、、違うくても、話の作り方、うますぎる… (2020年4月12日 19時) (レス) id: ca685f05f7 (このIDを非表示/違反報告)
陽乃(プロフ) - 黒胡椒さん» コメントありがとうございます、のんびり更新していきますのでよければお付き合いください。 (2020年4月4日 3時) (レス) id: 4760b364cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：陽乃 | 作成日時：2020年3月16日 17時
