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さて、記憶を思い出してしまった以上、前世の私と今世の私で上手く人格の折り合いをつけなければならない。
全員と対面してわかったが、どうにも私は愛想笑いと多少の倫理観以外は今世の私であるらしい。殺意や悪意、警戒心は手に取るようにわかるし、ぼんやりと窓の外を見て思いつく感想は『あの木、逃げる時に役立ちそう』『あの石壁だったら登れるな』『あそこ死角になってるのか』といったところだ。
彼らに対しても推し尊い、とかいう感情は湧いてこなかった。いや、ないわけではないらしい。
事実、部屋に通された今ではじわじわと、全員の宝石のような美しい瞳や各々特徴のある喋り方、高さも大きさもトーンも様々な声を思い出してとくとくと心臓が速くなっている。
しかし対面している最中は、W国の幹部であり全員がかなりの手練であることから油断は出来ないが、これからは従うべき相手であるという認識しかなかった。
言うなれば表と裏の性格というように、外では今世の私であるものの、誰もいないところだけでは前世の私が顔を出すらしい。
ふう、と大きく息を吐く。
転生、しかも何度夢見たか知れない彼らと共にいるという事実。寧ろこれが夢なんじゃないかと、今も疑っている。
「……」
お約束というやつだ、試しに頬を抓る。痛い。腕を引っ掻く、痛い。
袖を捲った拍子に傷が見えて、少しだけ顔を顰めた。今世の私の職業柄、体は傷だらけだ。腕も腹部も脚も、手や顔といった露出を避けられない部分が無事であることが信じられないほどに。
いくら軍人だったとはいえ、これを見られてしまえば言い訳も難しい。
服の入った段ボールを開けると、スカートは一着も入っていない。万が一傷を見られてしまっては困るからだ。今働かせてもらっているパン屋のご夫婦に見られたりしたら、それこそ申し訳なくて堪らない。
クローゼットにジャケットやコートを仕舞っていれば、こんこんとノックの音がした。
「はい」
「こんにちはー、しんぺい神って言います」
「あ、今開けますね」
先程はいなかった幹部の名前に、心臓が小さく騒いだ。
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陽乃(プロフ) - 黒猫さん» コメントありがとうございます、黒猫様の御趣味に添えられたようで嬉しい限りです。続編ものんびり書いておりますので、楽しんでいただければ幸いです。 (2020年5月29日 16時) (
レス) id: 89afdb7f98 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫 - 全て見させていただきました。俺はこういう作品が好きなので、とてもいい気持ちになりながら見ていました。神作品をありがとうございます。 (2020年5月21日 10時) (レス) id: 0779f5a88d (このIDを非表示/違反報告)
陽乃(プロフ) - （名前）さん» コメントありがとうございます。建物の設定は実在する基地や城塞、そして仰る通り大脱走など御本人たちの動画を参考にした部分もありますね。気づいてくださって嬉しいです。 (2020年4月12日 21時) (レス) id: 4760b364cd (このIDを非表示/違反報告)
（名前） - 9の途中まで見ました〜なんかPX、商店、、かな？みた途端、大脱走元にしてるんかなって思ったーーー！！実際どうですか？本当に大脱出が元だったら、、違うくても、話の作り方、うますぎる… (2020年4月12日 19時) (レス) id: ca685f05f7 (このIDを非表示/違反報告)
陽乃(プロフ) - 黒胡椒さん» コメントありがとうございます、のんびり更新していきますのでよければお付き合いください。 (2020年4月4日 3時) (レス) id: 4760b364cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：陽乃 | 作成日時：2020年3月16日 17時
