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……
「こらこら、図書室ではお静かにと言うだろう？ きみ、説教されたくないなら声を抑えてくれないか」
「そんなこと言ったって、できるわけな＿＿ちょっと！ なにすんの！」
「…………A」
手首を掴まれた。白く細い手のどこにそんな力があるのかというくらいの強さで私の腕を引く。氷、或いは雪。そんな冷たさがあった。…………死んでいる？ いや、そんなまさか。は、と息が漏れる。ようやく聞き取れた。鶴丸国永と名乗った目の前の男は確かに私の、否、
辺りの温度が急速に冷えていく気がする。凍えるような心地がした。身体の芯まで氷になっていくみたいな＿＿まるで、魂と器が引き剥がされるような。
「駄目！」
はっとして声を上げる。私に突き飛ばされた男は突然のことによろめいて、その時人一人分の隙ができた。
木製の床を蹴った。身体が悲鳴を上げている。契約の時たしか医者か誰かに説明されたはずだ、あれほど口酸っぱく“刀剣男士には気をつけろ”と言われていたのに今まで全く思い出せなかったなんて、どうかしている。
＿＿特に、
あの時の言葉が頭を過った。誰も教えてくれなかった。いや、違うか。誰も知らなかった？
わからない、わからない、わからない、わからない。
今私は一体誰を信用していいのかわからない。器であり運命共同体である彼女ですら沈黙している。誰も、私の声に耳を傾けてくれる人はいなかった。…………ただ一人を除いて。
……
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作者名：木浪 | 作成日時：2020年4月21日 15時
