嚆矢ー０１° ページ5
.
西部地区のトリオン兵は殲滅。市民が逃げ遅れていないかAは注意深く見て回ったが、人影は見当たらなかった。
Aに与えられた指示が変わっている。通常トリガーの能力を大きく上回る角付きトリガー持ち四人が出現したとのこと。木虎の報告により敵国の狙いがC級隊員だと分かった今、三雲と烏丸は雨取を含む訓練製らを基地へ避難誘導し、小南は市街地防衛に徹しており、最後にAの役目は二人の人型と交戦中の木崎に加勢することだった。
念の為に装備していたバッグワームを解除して、木崎の隣に駆け寄る。建物で相手の射線を防ぎつつ突撃銃で応戦している最中の木崎にAは内部通信で連絡をとった。
「お待たせ」
「角で強化された人型の話は聞いてるな？」
「うん」
「若いほうは磁力を操っていて 小さな鉄片のようなのが引き合ったり反発したりする。厄介そうだから全部躱せ。杖の方はまだ分からない、十分に警戒しろ」
「了解」
「C級を逃がす時間稼ぎだ、無理に仕留める必要は無いぞ」、木崎の言葉を最後にAは建物の壁に沿って走り出して薄暗い路地に出た。木崎が罠として張っているメテオラに接続されたスパイダーに注意しながら場所を移動し、まず角付きの青年に飛び掛かる。が、供給機関の一点を狙ったマイシスが、地面の爆発と同時に硬い棒のような何かで防がれる重い感触を燻る視界で感じた。
ここで炸裂弾に引っ掛かれるとは、と一度後方に退避し爆煙が引くのをAは険しい目で待つ。もし自分の存在に気づいていないとしたら奇襲が効くかもしれないという期待は惜しくも現実に叶うことはなかった。
「おや。……もう一人お嬢さんがおられたようだ」
焦げ臭い黒煙が徐々に透けてゆき、数メートル空いた距離から言う戦場で見せるものとは思えない静穏な顔つきをした老人を前にAの目は不機嫌に細まる。ーー気づいてるくせに、この老獪──自身の耳にさえ届きそうにない小声でそう零す。炸裂弾にはわざと引っかかったようだ。
ある問題がAの心の内に現れ出した。
「時間稼ぎってどのくらい足止めできればいいの？」
「修たちが基地に辿り着くまでできれば最高だが、最低でも10分欲しい」
「……そう」
人型に目付きの悪い視線を刺し続けたままのAの胸中に重い不安が広がった。
午前中からの防衛任務と先程の西部防衛を一人でやりきったAのトリオン残量がもう持久戦を仕掛けられるほど余っていない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 547人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
巡(プロフ) - ママリりすすさん» 返信が遅れてしまってごめんなさい(；；)激励のお言葉本当にありがたいです…！おかげで試験のほうもなんとかなりそうです(*´`) しばらくは作品の更新だけに集中ができるので 引き続き頑張りたいと思います！ 本当にありがとうございます！ (2021年6月8日 18時) (
レス) id: 8209256f86 (このIDを非表示/違反報告)
ママリりすす(プロフ) - 期末試験頑張ってください！単位もぎ取って帰ってきてください！！待ってます！ (2021年5月29日 18時) (レス) id: c128eaef1a (このIDを非表示/違反報告)
巡(プロフ) - Noahさん» ありがとうございます(*´`) 7日あたりからこれは間に合わないと気づいてほぼ不眠で書き上げたので理解不能な箇所もあったかもしれませんが…(^^;) いつまでも迅悠一に幸あれという気持ちを忘れずに精進していきます！ 本当にありがとうございます！ (2021年4月9日 23時) (レス) id: 8209256f86 (このIDを非表示/違反報告)
巡(プロフ) - ななちさん» ありがとうございます(*´`) 最新話まで…ッ！ 細部まで褒めてくださり書き手冥利に尽きまくります！特に専用トリガーは一番考え込んで設定したものなので尚更…(感涙) 遅筆なりになんとか頑張っていきたいと思います、本当にありがとうございます！ (2021年4月9日 23時) (レス) id: 8209256f86 (このIDを非表示/違反報告)
Noah(プロフ) - 続編おめでとうございます。迅さんの誕生日に持ってくるあたりに愛が溢れていて好きです。応援してます〜 (2021年4月9日 17時) (レス) id: 3eb26abe40 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：巡 | 作成日時：2021年4月9日 0時
