05一瞬 ページ6
“見てて”
そう言い、右手を私のいた村も含まれている、
色褪せた世界へ向けた大王。
次第に光の玉が集まって
辺りが眩しくなってくる。
「色褪せた世界を、光満ち溢れる
鮮やかな世界に」
大王がそう言った直後、光の集まりは
一本の光の筋となり、色褪せた世界へと
伸びた。
光の筋が届いた時、色褪せた世界全体が
光に包まれる。
「わぁ…」
それがあまりに綺麗で思わず声が漏れた。
「もっと近くで見る?」
「はい!」
近くによって見た色褪せた世界は
もう“色褪せた世界”ではなくなってきていた。
枯れた草木は若々しい緑に
涸れた湖にはキラキラ輝く水が。
壊れた建物も、綺麗になっていた。
.
「ここが…あの村?」
「綺麗になったでしょ。
ここももう、俺の村。俺の国。俺の世界。
これで、全部が俺の世界になった」
「大王様は世界で一番偉いってこと?」
「そう。…ほら、見てみて?」
もう一度、大王の指す場所を見ると
人がいた。
「…っあ…」
私を殺すため、追いかけてきた大人たちだ。
「悪魔の子が消えた!」
「どこだ、よく探せ!」
「今日こそは殺してやる!」
「俺たちの幸せのために!」
どれだけ私がお城で眠っていたのかはわからないけど、
この人たちはまだ私を探している。
また、この村に帰ってこなければいけないのだろうか。
せっかく綺麗な世界になったのに、
人間がこれじゃあ意味がない。
また淀んだ空気の世界になってしまう。
、
、
「…よくないね、この大人たちは」
もう一度大王が手を前に出すと、
今度は紫色の光の筋が現れ
大人たちに向かっていった。
『…う、グ…うわぁぁぁ!!!!』
大人たちの一人が、突然胸を抑え大声を上げる。
それから次々と大人が倒れていく。
そしてその場所の全員が動かなくなり、
紫の光に包まれ消えてしまった。
「…え、な。何したの?」
「俺はワガママだからね。
嫌いなものは排除しなければ気が済まないんだ」
一瞬だけ。
一瞬だけだけど、大王の顔がこの世の何よりも怖く感じた。
「これで大丈夫、キミを殺したいと思う人間はいなくなった。
君は幸せに暮らせる」
次の瞬間には、もう子供っぽい笑顔に戻っていた。
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MAGIC(プロフ) - 来世編作って下さい!!!!!! (2019年1月18日 20時) (レス) id: 7088d3da14 (このIDを非表示/違反報告)
MAGIC(プロフ) - めっちゃ感動しました(´;ω;`)めっちゃ涙でたし おいがわさぁーん 素敵なお話でした!これからも頑張ってください。 (2019年1月17日 22時) (レス) id: 7088d3da14 (このIDを非表示/違反報告)
蘭緒@Trombone - 感動しました。最後な近づくにつれて涙腺崩壊(笑)素敵なお話でした。これからも頑張ってください! (2018年1月17日 21時) (レス) id: 0600f4113b (このIDを非表示/違反報告)
朱蘭 - 最後で涙腺が…及川さん大好きです!! (2018年1月4日 17時) (レス) id: 0b13844573 (このIDを非表示/違反報告)
れいる(プロフ) - すごく素敵なお話でした!!もう涙が止まらなかったです!!!これからも頑張って下さい!!!作者登録とお気に入り失礼します!! (2017年12月22日 23時) (レス) id: 20cf36dfdb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あお | 作者ホームページ:http://www.pixiv.net/member.php?id=2098107
作成日時:2014年11月21日 18時