【FHQ】世界が終わるその前に【及川徹】《完結》

17その先の答え ページ19

「美人で頭が良いという噂の大王の側近が
どんな人物か見てこいと言われたらしいですよ」


こんなナルシストみたいなこと、
言いたくないけど実際言われたことを
そのまま言った。



「だとしてもわざわざ遣いを送るか…？

やはり何か企みが…」


ぶつぶつと、聞こえる言葉。


あぁ、これはもう仕事の時と同じ顔に
なってしまっている。





「大王、休憩時間にまで仕事モードでは
体壊しますよ」



「んー、でもなぁ。

これからは城の外に出る時は護衛つけてね」



護衛！？

何もそこまでしなくてもいいのでは。



「そこまでしなくても…

カラスノは反乱を起こすような国では
ないでしょうし…」




カラスノはこの世界の中でも平和な国。

この地、セイジョウとも良好な関係である。








「――甘いよ、考えが」




冷たい瞳。

低い声にゾクリとした。




「Aは頭がいいけど、
こういう場面では馬鹿だね。

考え方が優しすぎる」


「な…」




一応自分の頭脳には自信を持っている。


“馬鹿”という言われ慣れない言葉に
少しだけカチンときた。





「俺の事をよく思わない国だってある。

俺の事を殺そうと企てる輩もいるだろう。


俺の部下を人質に取って無理な要求をする
輩とか_____もね」





何か言い返したい。


でも、大王が言っていることは事実。


この世界の皆が皆、大王の事を慕っている
わけではない事は私もわかっている。


だから、返す言葉が見つからない。






「人や国が絶対に裏切らない保証だって
ないんだよ。


この世界を美しく保つには、常に疑う事。



信じられるのは自分だけだ」






大王がこんなことを常に思っていたなんて。





「私の事も___



…、いえ」






私の事も信じられませんか、



その答えは何となくわかって、
怖くて聞けなかった。

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