STORY 34 ページ34
いっそのこと死んでしまおうか。以前まではそう考えたこともしばしばあった。父親に甘えたことはなかった。誰かに『苦しい』と言ったことも。どんなに上手く行かなくても生まれてきた以上、それでも生きてゆこうと一生懸命やってきたつもりだった。
それなのに女共は嗤う。そんな苦労も知らずに好き勝手言って、こちらが向こうに害を与えた訳ではないのに、何らかの理由をつけて追い詰める。所詮、理由なんてどうでもいいのだ。奴らはただ、何かを馬鹿にしないと気が済まないのだから。
その時背後でバサリと毛布を跳ね除ける音がして振り向くと、身体を起こしたマーロンと目が合う。
「おはよう。よく眠れた？」
それ以外の言葉は出ない。なにせ下手なことを言うとまた暴れかねないからだ。
「スティーブは……」
この話題も駄目だ。義理とはいえ『父親』が死んでショックに違いないのに。かといって沈黙というのも……。
「父さん、僕をマシューと間違えてた」
マシューが何かを言う前にマーロンが口を開いた。その声は相変わらず感情がない。
「憔悴してたから心配で話しかけたんだ。そうしたら……『何故お前がここに居る。クラウディアを殺して、それで終わりじゃないのか。これ以上何を奪うつもりだ』って。父さんはナイフを持っていた。それで、『俺が死ねば満足か』って言って……自分で腹を刺して死んじゃった。僕が何を言っても父さんは死ぬ最期の瞬間まで『マーロンだけは殺さないでくれ』とばかり言ってた」
ここで下手に何か言わないほうがいい。長い間様々な人間と接していたマシューは防衛本能のようなものがそう告げるのを感じる。
「……そういえば、こんなことも言ってたよ。『たとえ血が繋がっていなくてもお前なんかより愛してる』って。僕の『本当の父親』とマシューを混同してたのかな。それとも……」
マシューは動揺を必死に隠す。何が防衛本能だ、黙ってたせいでますます悪い方向に行ったではないか。
何も言えずに身構えていたが、マーロンはそれ以上父親の話をすることはなかった。
「一つ訊くが、何故自分から魔女だと言った。俺に断罪させるのか？」
彼は奇しくも無意識にクラウディアの時と同じことを言っていた。
「だって、理不尽だ」
「何が？」
「逆に何で魔女なのに僕は生かすの？」
「それはお前が子供だから――」
「マシューが殺そうとしてるロザリアだって僕と三つしか年が違わないよ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 6人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
田無苑珠(プロフ) - 寝夢さん» ただでさえ無実の女性を平気で殺しまくってる人ですからね。どこかもう自分でもどうしようもできないほど壊れてるんです。 (2017年6月5日 20時) (
レス) id: f9f63da005 (このIDを非表示/違反報告)
寝夢(プロフ) - 田無苑珠さん» もう色々とアレな人になっちゃってますねミスター・マシュー (2017年6月5日 20時) (レス) id: 0c9f17ee4b (このIDを非表示/違反報告)
田無苑珠(プロフ) - 寝夢さん» 読んでくれてありがとうございます！はい、言いましたw……と、言っても実は恋愛という意味ではなくて、本人もよく分からない感情をマーロンに抱いてるんです。 (2017年6月5日 20時) (レス) id: f9f63da005 (このIDを非表示/違反報告)
寝夢(プロフ) - 面白いです！マシュー、……あ、愛してる…って言いました……？ (2017年6月5日 10時) (レス) id: 0c9f17ee4b (このIDを非表示/違反報告)
田無苑珠(プロフ) - ロイヤルストリートさん» ありがとうございます！好きになってくれて嬉しいです (2017年5月23日 13時) (レス) id: f9f63da005 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：田無苑珠 | 作成日時：2017年5月5日 13時
