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STORY 28 ページ28




 深夜二時、いつものごとく悪夢にうなされて飛び起きたマシューは枕元に立つ女に気づいて絶叫する。

「何なんだお前はっ! 俺に何をしようってんだよ!? 毎回毎回現れやがって……お前は俺が殺したんだ! 大人しく地獄に堕ちろ魔女がっ!」

 叫んでから彼は激しく咳き込む。クラウディアの霊はただそれを見つめていた。

「はっ……はぁ……はぁぁ……」

 マシューは発作と恐怖に震えながら必死に自分を落ち着かせようとする。だが次第に過呼吸を起こす。夕方、魔女の取り調べの続きをしようと戻れば地下牢の中でジョンが死んでいた。ロザリアがやったのは間違いなかった。そのせいで信憑性が増したのだ。――魔女は簡単に人を殺せる。

「げほっ……うぅ……!」

 押し当てた手の甲には僅かな血。それを目にしたマシューは見たものを否定したいかのように首を横に振る。

「い、嫌だぁ……こんな……助けてくれ……お前、お前が、やったんだろ……? 俺を、殺し……」

 クラウディアは何も言わない。心なしか、先程よりも近づいているように見える。

「せめて何か言えよっ! せめて、意思疎通……あぁ、怖くてたまらねぇ……来てくれ、誰でもいい……マーロン? そうだ、マーロン……駄目だぁ、来るわけない……お前の母親だろ? 止めてくれよ……」

 彼は目を瞑りたかった。だがもし再び目を開けた時、前よりも近づいていたらどうしよう。

「死にたくない……助けてくれ……許し」

 マシューはそこで表情を変えた。この魔女に『許してくれ』だと? 何を言っている。許しを請うのは俺ではなく魔女に決まっている!

「……何度現れても無駄だ。俺は間違ってなどいない。俺は魔女に裁きを下すだけだ。俺を殺したいならよぉく聞け。死んでもいたぶってやる。地獄に堕ちても俺はまた――貴様らを殺してやる!」

 それを聞いたクラウディアは一歩後ろに下がると静かに姿を消した。去り際に初めて、どこか諦めたような表情を浮かべて。

「あ……はぁ……あははっ……ひゃははははっ!」

 勝った。あの魔女は怖気づいたんだ。勝った勝った勝った! 俺は間違ってない! 俺は正しいのだ!
 ひとしきり狂ったように笑った後、マシューはふらりとベッドから立ち上がり、窓の前へ立つと胸の十字架を握りしめる。それは信仰の薄い彼からは想像もつかない姿だった。

「聞こえる……風の変わる音が……私が勝つ……害悪を排除……神よ……私に勝利を……」

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田無苑珠(プロフ) - 寝夢さん» ただでさえ無実の女性を平気で殺しまくってる人ですからね。どこかもう自分でもどうしようもできないほど壊れてるんです。 (2017年6月5日 20時) (レス) id: f9f63da005 (このIDを非表示/違反報告)
寝夢(プロフ) - 田無苑珠さん» もう色々とアレな人になっちゃってますねミスター・マシュー (2017年6月5日 20時) (レス) id: 0c9f17ee4b (このIDを非表示/違反報告)
田無苑珠(プロフ) - 寝夢さん» 読んでくれてありがとうございます!はい、言いましたw……と、言っても実は恋愛という意味ではなくて、本人もよく分からない感情をマーロンに抱いてるんです。 (2017年6月5日 20時) (レス) id: f9f63da005 (このIDを非表示/違反報告)
寝夢(プロフ) - 面白いです!マシュー、……あ、愛してる…って言いました……? (2017年6月5日 10時) (レス) id: 0c9f17ee4b (このIDを非表示/違反報告)
田無苑珠(プロフ) - ロイヤルストリートさん» ありがとうございます!好きになってくれて嬉しいです (2017年5月23日 13時) (レス) id: f9f63da005 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:田無苑珠 | 作成日時:2017年5月5日 13時

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