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STORY 22 ページ22

思わず手を引っ込めてから気に障ったのではないかと表情をうかがったが彼は特に気にしていないようで、むしろ面白がっているように見える。

「俺は幽霊でも人間でもないぞ」

「ごめん、そうだよね……え、人間でもない?」

 それなら何なのかと訊こうとしたが答えを知るのも怖い。
 ロザリアは結局別の質問をすることにした。

「あなた、こういうところによく出るの?」

「面白くて」

「面白い?」

「ああ。追い詰められた囚人の顔を見るのが楽しくてな」

 訊かなければよかった。そもそもこの人には何を訊いても答えが怖い気がしてならない。

「子供というのは期待通りの反応をしてくれるから見ていて本当に面白いよ。おかげで先程は笑いを堪えるのに必死だった。俺が悪魔憑きだなんてな。あの男、俺を『魔女』とも言っていた」

「魔法とかは使えないの?」

 言ってから口をつぐむ。馬鹿なことを訊いてしまったかもしれない。

「もし使えてたらそのドブネズミを金にでも変えてるさ」

「ネズミ? きゃあ!」

 足のすぐ横を走り抜けた影に思わずイヴェルに飛びついてから慌てて離れる。

「『小ネズミ』呼ばわりされてる割にネズミが苦手とは」

「見た目は可愛いけど……黒死病を運んでくるから」

「『見た目は可愛い』というのも珍しいな。そういえばあの男、黒死病もお前が流行らせたということにしていたが」

「そこまで聞いてたの?」

「聞こえてきた。あいつの言うことはほとんどデタラメだから気にするな」

「え? あ、うん、ありがとう」

 話してみると案外まともでロザリアはあんなに怖がっていたのが馬鹿馬鹿しくなった。少なくとも次の一言を聞くまでは。

「魂を吸い取るというのはあながち間違っちゃいない」

「え」

 再び硬直するロザリアの前でイヴェルはちょうど近くを通ったドブネズミを片手で捕らえてみせた。そして彼が手を離した時にはそれは既に絶命していた。

「まあ正しくは『命を吸い取る』なんだが」

 そこで怯えているロザリアに気づいた彼は少しだけ笑う。

「お前は殺さないから安心しろ。その代わりもし望むなら……マシュー・ホプキンスとやらを殺してやってもいいぞ」

「え?」

「どうもジョンのことはそれほど恨んでいないように見える。恨んでいるとしたら“魔女狩り将軍”のほうだろうと思ったんだ。だから、殺してやろうか?」

 沈黙の後、ロザリアはただ「少し考える時間が欲しい」と答えた。

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田無苑珠(プロフ) - 寝夢さん» ただでさえ無実の女性を平気で殺しまくってる人ですからね。どこかもう自分でもどうしようもできないほど壊れてるんです。 (2017年6月5日 20時) (レス) id: f9f63da005 (このIDを非表示/違反報告)
寝夢(プロフ) - 田無苑珠さん» もう色々とアレな人になっちゃってますねミスター・マシュー (2017年6月5日 20時) (レス) id: 0c9f17ee4b (このIDを非表示/違反報告)
田無苑珠(プロフ) - 寝夢さん» 読んでくれてありがとうございます!はい、言いましたw……と、言っても実は恋愛という意味ではなくて、本人もよく分からない感情をマーロンに抱いてるんです。 (2017年6月5日 20時) (レス) id: f9f63da005 (このIDを非表示/違反報告)
寝夢(プロフ) - 面白いです!マシュー、……あ、愛してる…って言いました……? (2017年6月5日 10時) (レス) id: 0c9f17ee4b (このIDを非表示/違反報告)
田無苑珠(プロフ) - ロイヤルストリートさん» ありがとうございます!好きになってくれて嬉しいです (2017年5月23日 13時) (レス) id: f9f63da005 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:田無苑珠 | 作成日時:2017年5月5日 13時

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