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花火大会は終盤にかかった。
川沿いの芝生に座って、
2人並んで暗い空を見上げた。
一発目の花火が、打ち上げられて、
夜を明るく照らした。
『綺麗……』
大昇「うん、綺麗」
次々と花火が打ち上げられて、
色とりどりの綺麗な花が咲いた。
『こんな花火、もう見れないのかな…』
大昇「……ん?」
『あ、いや、なんでもない…』
思わず、こぼれた言葉。
大昇「だったら、どうして泣いてんの」
え……。
頬に手を当てると、涙がつたっていることが確かめられた。
『あれ…なんでだろう……おかしいな…笑』
涙を止めようとしても、体がいう事を聞かない。
大昇「A、俺を見て」
隣からそっと手を伸ばして両手を優しくとる。
大昇「…A」
名前を呼ばれた通りに、大昇くんの顔を見ると
大昇くんは私よりずっと悲しい表情をしていた。
『……大昇くん』
大昇「泣かないで、」
『……ごめんね、大昇くん、』
泣きそうなのは、大昇くんの方で、
見てられないくらい辛そうな顔をしてる。
だけど、大昇くんはずっと私の目を見てくれている。
『大昇くん…これ受け取って欲しい』
大昇「……?」
掴まれた手に、カメラのフィルムをそっと置いた。
大昇「これ…」
『あの時の、フィルムだよ。』
最後の余った1枚に、大好きと書いたフィルムを渡した。
それを渡すと、大昇くんは驚いた表情を浮かべた。
大昇「じゃあ…俺からも」
『……ん?』
すると、
ゆっくり
顔が近づいてきて
長いまつ毛が見えた頃には
もう手遅れで、
目を閉じた瞬間、
優しく唇が触れ合った。
大昇「俺は、Aが好きだ。」
目を開けた時には、
大昇くんが、優しく私を見つめてくれていた。
『……私も、大昇くんが好きだよ。』
その瞬間、
1番大きい花火が、空にドンと打ち上がった。
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作者名:ホワイトチョコ | 作成日時:2022年8月13日 0時