〇大昇 ページ36
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高校の制服が押入れの奥にしまわれ、
今日から大学生になった。
と、言っても
授業が始まるのは4月末から。
今月は丸々いっぱい春休み。
「あー暇だー」
と声に出しながらベッドに体を預けた。
ため息をついて、
ふと横を見た時
3年生の時にフィルムカメラで皆を撮ったアルバムが目に入った。
なんとか体を起こして
そのアルバムに手を伸ばした。
1ページ目からペラペラとめくっていき
1年間の思い出を呼び起こしていく。
懐かしい記憶が鮮明に蘇りながら
次のページをめくった時、
俺の手が止まった。
「……A。」
唯一、その1枚しかアルバムにないAの写真。
俺が勇気を振り絞って撮れた1枚だからだ。
夕焼けをバックに、艶やかな髪をなびかせ、
俺の方を笑顔で見ている写真。
見つめていると、まだ鮮明にその瞬間を思い出せる。
…………。
でも、
Aはもうこの世にはいない。
卒業式が近いある日、
突然の事故で亡くなってしまったから。
……一緒に卒業式、出られたら良かったのに。
数分の間、Aの写真があるページから
次のページへとめくることが出来ずに止まっていた。
だけど、Aへの想いを噛み締めて
次へ、次へと、
またアルバムを見返し始めた。
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作者名:ホワイトチョコ | 作成日時:2022年6月20日 21時