陸拾仇話 ページ25
結論から言うと、私は間に合わなかった。
宙に言われた現場に向かうと、そこには既に息絶えた匡近と彼を抱く実弥の姿があったのだ。
「下弦ノ鬼ハ、倒シ終ワッタヨウダガ………Aノセイデハナイ。ヨク頑張ッタ」
『結果が全てだよ、宙。その過程が生きるか死ぬかも、ね』
慰めるように寄り添う宙を尻目に、Aは実弥の下へと向かう。
「……お前は柱なんだろォ? なんでもっと早く来ねェんだよォッ」
「待て、幻柱様は衰弱している中を来てくださったのだ! それもこの任務には関係もなくーー」
「知るかァ! 柱なら下の隊士を守るのが仕事だろうがァ!? テメェが来るの遅せェせいで匡近は死んだんだぞッ!? 柱なんて、鬼殺隊なんて辞めちまえッ」
『……うん、その通りだと思う。実弥の言う事は間違っていない、君の言う事は正しい』
友を失った勢いで叫ぶ実弥を慰めるように、Aは彼の目の前に膝をつく。
『私は柱失格だと思う。守りたい者を助ける為に鬼殺隊に入隊したのに、実際救えるのは一部の人達だけで、残りは私の手から零れていく』
今も目を閉じれば分かる。思い出せる。
任務先で助けられなかった人達の顔を言葉を。
『……だが、私は諦めないし辞めない。この手でまだ救える者がいる限り、私は辞めるつもりはない』
『殴りだければ殴ればいい、それが君と匡近君への贖罪となるならば』
「なりません、幻柱様! 貴女様が良くても隊律違反になってしまいます!」
『大丈夫、私の権限で揉み消せるから』
Aが隠に向かって微笑むと、何か物言いたげな表情で見つめながら頷いた。
実弥の方を見ると、彼は歯を食いしばって何かを考えていた。
が、次の瞬間、彼の全力の拳がAの頬にめり込んだ。
流石は次期風柱と言ったところか。その威力は凄まじく、何の防御も抵抗もしないAは為す術なく吹き飛び、転がる。
(さ、流石にこれはキツいかも……)
元々、衰弱していた時に呼吸を乱用したのも加わったのだろうか、当たりどころが悪く脳震盪を起こしてしまったようだ。
そんな事を考えていると、仰向けのAの前に実弥が現れた。
「俺だって、アイツを守れなかったッ、だから今回はこれで許してやらァ………ッ」
そう言うと、彼はくるりと背を向けた。
それを見ると、Aはゆっくりと目を閉じた。
ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー
なお、気絶したAを見て隠と実弥が青ざめたのは、また別の話。
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尊い - 続きが速く見たいです (2022年3月26日 23時) (レス) @page11 id: 730adcd2c0 (このIDを非表示/違反報告)
にゃーちゃん - 続きが気になるぅぅぅぅうぅぅう!!!!更新楽しみにしてます! (2022年3月18日 8時) (レス) @page11 id: 04c952a5b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:わんフル | 作成日時:2022年2月22日 8時