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陸拾壱話 ページ16

少し不貞腐れた様に、ゆっくりと私から離れるしのぶちゃん。


初めてこんなにも鬼に感謝の気持ちを抱いた。ありがとう、鬼!


ゆっくりと神経を研ぎ澄ませると、天井裏に複数の鬼の気配を感じた。深く、ゆっくりとした呼吸でタイミングを見計らう。


『しのぶ、合図したら私に合わせてくれる?』


「……分かりました」


もう一度、目を閉じて深呼吸をする。


ここは人通りの多い町中の宿。
下手に音を立てれば、余計な注目を浴びるだろう。


細心の注意を払いながら、私はしのぶちゃんに絡められていと足をほどく。




すると………………




ガタッと天井裏で物音がした瞬間、鬼が姿を現す。


しのぶちゃんはすぐさま私から軽やかに飛び退け、布団の中に隠してた刀を抜く。


まだ完成はしていないとは言えど、その藤の毒の威力は凄まじい。刺された鬼は苦しみもがき始める。


「貴様ら、鬼狩りかぁ!?」


「ふん、罪なき人を襲っておきながら逆上ですか?」


『し、しのぶ………そこまでにね?』


私は目の前の彼女を宥めつつ、刀を抜き取る。
まだ鬼は複数人はいる、ここで時間を掛けるのは惜しい。


『貴方が次、生まれてくる時が平和でありますように………今は自身の罪と向き合ってくださいね』


微笑むように、慈悲深い瞳でそう告げると、Aは動き出す。


『幻天の呼吸 参ノ型 鬼神の剣』


無駄な苦しみを与えぬよう、一瞬で鬼の頸を斬り落とす。


鬼が灰になって消えなくなるまで、その姿を見つめ続ける。


「Aは鬼に対して優しすぎるわ………まるで姉さんみたい」


『鬼だって元は人間なんだよ? それに、好き好んで鬼になった訳じゃないんだから、最期ぐらいは……ね?』


「それがAの信念なら、私が言うことは無いわね」


どこまでも姉さんと同じなんだから、と最後に呟くと、しのぶちゃんは天井裏に飛び乗った。


いつの間にか、自分の知らないところで成長していたしのぶに対して、Aは少し感慨深く頷く。


『これが親の気持ちなのか………後でカナエちゃんに聞いてみるか』


これは、しのぶちゃんの事を自慢するためではない、ただの報告だ。
別にそういうやましい事は断じて考えてはいない、うん。


そう、先程の件で妙に意識している訳では無い!


Aはふんすっと気合を入れると、彼女の後を着いていく。






この任務が終わった後、しのぶがやけに積極的になった事に、危機感を覚えるカナエとAであった。

陸拾弐話→←呼吸の型紹介(現在)



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尊い - 続きが速く見たいです (2022年3月26日 23時) (レス) @page11 id: 730adcd2c0 (このIDを非表示/違反報告)
にゃーちゃん - 続きが気になるぅぅぅぅうぅぅう!!!!更新楽しみにしてます! (2022年3月18日 8時) (レス) @page11 id: 04c952a5b3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:わんフル | 作成日時:2022年2月22日 8時

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