レンタル彼氏の、悟さん【五条悟】

story 21 ページ23

＊




優しく名前を呼ぶその声は今は私だけに向けられている。




濡れた瞳は私だけを捉えている。




余裕がなさそうに求める身体も私だけ。







解約を断ることも出来たけどそうしなかったのは、
偽りの愛を続けるより1度だけ深く彼と繋がることが出来ればもうあとは何もいらないと思ったから。







何も纏っていない身体で抱きしめ合いぬくもりを感じた瞬間、




今までで1番、悟さんの心に入り込めた気がした。







私の胸に顔を埋める悟さんの頬を両手で包んで顔をあげた悟さんの瞳に笑いかけた。







「幸せをありがとうございました」








悟さんは一瞬驚いた顔をしてすぐに小さく微笑んで、
こちらこそと呟いた。







そのまま2人で抱き合ったまま眠りについた。








・








目が覚めた時
その場にはもう悟さんの姿はなかった。







だけど後悔はしていない。
寧ろこれでよかったと思っている。








…はずなのに







1人で食べる朝食は何の味もしなかった。
1人で寝る夜は酷く虚しく感じた。







ふとした時に携帯を確認してしまう。







同僚の人にデートに誘われオシャレをしても鏡に映る自分の顔は、何の感情も持っていなかった。







前までは、1人の自分が嫌で誰かと一緒にいたいと思っていた。





だけど今は1人でも構わなかった。
彼以外の人と一緒にいたいと思えなくなっていた。

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