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夜の街と月光祭(7-3) ページ12

夜目が利いてきて、やっと周囲の状況を確認すれば、複数の黒いマントを見にまとった赤目の男が俺たちを取り押さえていた。
かくいう俺も手足を、信じられないほどの強さで握り締められ身動きが取れない。
明かりの影響で俺はバケゆかしかまともに認識できないが、他の面々はどうしているだろうか。
いや、それよりも防御を!

「バケゆか!〈障壁〉は!?」

「張ってるよ!!張ってるけど、内側に入ってきて……」

「はぁ!?」

バケゆかの〈能力〉である〈障壁〉は、愛の戦士でも割れない強力な〈能力〉だ。
故に万物を遮断することができるのだが、こいつらはどうやって内側に入ってきた!?
とにかく迎撃を……俺の〈能力〉で氷の短刀を生み出し、それを右手を拘束する男の腕に突き刺した。

「ぐっ……」

男が呻き声を上げて、俺の腕を掴む拘束が緩むと、手を振りほどき、左手を掴む男の腕に触れて凍らせ、新しく生成した二本の槍を足元の男どもに向けて振り下ろした。

「ぎゃッ!!」

汚い叫び声をあげた男どもの気配が俺から遠ざかる。ようやく地面に足がつく感覚。

「ひっ、うぐぅ……ッ!!」

「バケゆかッ!?」

バケゆかが不意に嚙み殺すような悲鳴をあげた。
バケゆかは男の1人に首筋を噛まれていた。剥きだした鋭い八重歯がバケゆかの首に埋め込まれて、血が伝う。
バケゆかは恐怖に染まった顔で浅い呼吸を繰り返す。

「て、めぇ……バケゆかに何してやがるッ!!」

俺は感情のままに憤慨し、両手に生み出した短剣を振り上げてバケゆかの血を吸う何者かに斬りかかる。

……が。

ぱっと周囲が闇に包まれて、俺は標的を見失う。
視覚情報が消えたことにより、より鮮明に耳が拾う音に意識が向いた。
そこには、にどみの、ズズの、とりっぴぃの、なな湖の、愛の戦士の呻き声。
奴らの名前を呼ぼうと息を吸い込んだ時だった。

背後に巨大な質量を感じた。

寒気が全身を支配して、冷や汗が垂れる。
振り向こうとした時には、既に顔面に向けて鋭い爪のついた手が伸ばされていて、暗闇の中で紅く光る二つの目が、やけに記憶に焼き付いた。

ぱっと、その手のひらが半透明の薄紫色の板のようなものに弾かれて、真紅の目が動揺する。
これは見間違いなどするはずもない。
バケゆかの〈障壁〉だ。

「とりなん、せんせ……逃げ、て……」

尻すぼみに消えてゆく震えた声に、ぎりと歯をくいしばる。

「必ず助けるからな!待ってろ!!」

俺は闇に紛れてその場を飛び出した。

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あんぴーなっつ(プロフ) - かおりのさん» コメントありがとうございます!琵琶ちゃぷの話はかなり気合入れたので、感動していただけて嬉しいです!閲覧ありがとうございました(*´ω`*) (2019年9月15日 22時) (レス) id: 236992ae33 (このIDを非表示/違反報告)
かおりの - めっちゃ面白いです!琵琶ちゃぷの所すごい泣けました!全然ゆっくりでいいので更新頑張って下さい! (2019年9月14日 22時) (レス) id: a7a49677e4 (このIDを非表示/違反報告)
あんぴーなっつ(プロフ) - ネコさん» コメントありがとうございます!楽しく読んでいただけて私も嬉しいです!閲覧ありがとうございました(^ω^) (2019年7月16日 16時) (レス) id: 236992ae33 (このIDを非表示/違反報告)
ネコ - 毎回ストーリーにドキドキしちゃってます!www更新頑張ってください! (2019年7月15日 21時) (レス) id: ab4778a323 (このIDを非表示/違反報告)
あんぴーなっつ(プロフ) - すぷらさん» わっ!コメントありがとうございます!mzmn界隈で見たことのある方から感想いただけて嬉しいです!これからも頑張ります(*´ω`*) (2019年5月27日 14時) (レス) id: 236992ae33 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あんぴーなっつ x他1人 | 作成日時:2019年3月18日 17時

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