先輩と後輩、絆と契り(6-9) ページ8
ばちん、と金具の外れるような音がしてぬーすけさんを縛っていた鎖が外れる。
それと同時に紙芝居をめくるように世界から黒が剥がれ落ちて、光が満ちるように白く染まった。
激しい水流に押し流されそうになりながらも懸命に踏みとどまって、前方で眠ったままのぬーすけさんのシャツの襟首を掴んで、頬を怒り任せに勢いよく引っ叩いた。
「いい加減に起きろッ!!!」
その一声でぴくり、と微かに瞼が動いて、薄く瞼が開く。
それと同時に背景で鳴っていたmegaちゃんの歌が鮮明に流れ込んで来て、それを耳にしただろうぬーすけさんの瞳に光が宿った。
ぬーすけさんはぽん、と俺の肩を叩いて自らの体を起こし、感情の読めない顔でニヤリと笑うと、口パクで何かをーー口にした。
『ありがと』
それを読み取った瞬間に、周りが眩く輝いて、俺の意識は遠のいたーー
*
「……どみ、に……どみ、…………にどみッ!!」
「んぁ……?」
誰かに強く肩を揺すられて、目を覚ます……あれ、俺寝てた?
ぼんやりとした目で捉えたのは、心配そうな目をしたとりなん先生。
俺の目が開いたのを確認すると、はぁとため息をついて背後を指差した。
眉をひそめて俺を見る他の混ぜメンの隙間から、ベッドに突っ伏したなな湖さんと、眠ったままのぬーすけさんが覗く。
なな湖さんがぴくりと動いて、ゆったりと顔を起こす。
「……あれ、俺……?」
ぼんやりとした目を擦りながらなな湖さんはしばらくぼやぼやした後、はっとしてぬーすけさんの顔を振り向いた。
なな湖さんが握っていたぬーすけさんの手が、一瞬動いて、次に重い瞼がゆっくりと押し上げられた。
しばらく天井を眺めていた瞳が、なな湖さんの姿を捉えてーー唇が弧を描く。
「……おはよ、早いねなな湖さん」
「はっ……先輩が遅いんすよ……」
くしゃりと顔を綻ばせてぼたぼたと涙を落としたなな湖さん。
よいしょ、と体を起こしたぬーすけさんは泣きじゃくるなな湖さんの体をそっと抱きしめて、微笑んだ。
「ただいま、なな湖さん」
「おかえりッ……ぬーすけ先輩!!」
*
「いやぁ酷い目にあったね」
「こっちのセリフですよ。目の前で人が死にかける俺の身にもなってください」
「まあ『悪魔』退治頑張ってよ、なな湖さん。ここで待ってるから」
「……帰ってきたら何しでかすつもりですか?」
「ん?今度はその原始人みたいな服を破いてやろうか?」
「やめろ!!」
*
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あんぴーなっつ(プロフ) - かおりのさん» コメントありがとうございます!琵琶ちゃぷの話はかなり気合入れたので、感動していただけて嬉しいです!閲覧ありがとうございました(*´ω`*) (2019年9月15日 22時) (レス) id: 236992ae33 (このIDを非表示/違反報告)
かおりの - めっちゃ面白いです!琵琶ちゃぷの所すごい泣けました!全然ゆっくりでいいので更新頑張って下さい! (2019年9月14日 22時) (レス) id: a7a49677e4 (このIDを非表示/違反報告)
あんぴーなっつ(プロフ) - ネコさん» コメントありがとうございます!楽しく読んでいただけて私も嬉しいです!閲覧ありがとうございました(^ω^) (2019年7月16日 16時) (レス) id: 236992ae33 (このIDを非表示/違反報告)
ネコ - 毎回ストーリーにドキドキしちゃってます!www更新頑張ってください! (2019年7月15日 21時) (レス) id: ab4778a323 (このIDを非表示/違反報告)
あんぴーなっつ(プロフ) - すぷらさん» わっ!コメントありがとうございます!mzmn界隈で見たことのある方から感想いただけて嬉しいです!これからも頑張ります(*´ω`*) (2019年5月27日 14時) (レス) id: 236992ae33 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あんぴーなっつ x他1人 | 作成日時:2019年3月18日 17時