√D! (ページ5)

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おかえり-赤ページ5

「う～やだやだ学校行きたくない！！」
「そんなこと言わんでや」

学校に行きたくないと駄々を捏ねるA。真っ赤なランドセルをこまい身体で背負って、玄関で俺の脚にしがみつく。

「学校行かんかったら、俺と一緒に居れへんで？それでもええん？」
「う……やだ……」
「んじゃあ行こうな。学校まで車で送ったるから」

少し拗ねたような顔をして、結局俺が送ると言えば行ってくれるのだから本当に可愛い。

Aは親戚の子供だ。近縁だからか知らないが、夫婦で旅行に行くのだというその人は俺に世話を押し付けた。
「あんた子供の世話得意やろ？お願いな」
何処からその情報が流れたのだろう。寧ろ子供は苦手だ。
そんなこんなで預かることになったA。
今はこんなにも溺愛しているのだから、未来とは本当に分からないものだ。

いつも通りAを学校に送り、そのままの足で仕事に行く。
Aが待っているので残業は出来るだけ無くしたし、Aのためなら何だって出来る。最初はあんなに乗り気じゃなかったのに、と我ながら単純だなぁと苦笑い。

夜6時。定時になりいの一番にエレベーターに乗り込み、車でAの居る家へ向かう。
下から見上げると電気のついた窓があって、誰かが待っていてくれることの幸せを噛み締める。

「ただいま」
「おかえりトントン！」

どたどたと慌ただしい足音が聞こえてきて、飛び込んできたAを受け止める。

「ねぇ、ごはんまだ？わたしお腹すいちゃった！」
「おん、ちょっと待っててなぁ」

あーかわいい。くそかわいい。最高オブ最高。
労働で疲れた身体に染み渡るAの笑顔。おてんばで可愛いA。

「……ずっとこうしておれたら、ええんやけどなぁ」
「トントン？」

不思議そうに俺を見上げるAの頭をわしゃわしゃと撫でると、きゃらきゃらと笑った。

Aが小学校を卒業する頃、その夫婦は帰ってきた。別れがびっくりするほど悲しくて、まるでぽっかりと穴が空いたようだった。