きづけ、ばか

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「んふふ、ふー…ふふ…」

「…飲み過ぎちゃう？」


最初の宣言どおり、あれからどんどんお酒を注文していったシゲ。

よっぽど舞い上がってたんだろうけど、今まで見たこともないようなペースでグラスが運ばれてきて。

私も飲んでやろうかと思ったけど、お酒に強いはずのシゲが赤くなっていくのを初めて見てやめた。




「よっぱらってらいっ！らいじょーぶ！！」


そして見ての通りベロンベロン。
完全に出来上がってるシゲ。


失恋のショックで荒くれるはずだったのに、こんな頼りないシゲは初めて見て、冷静になった。




「はぁ…帰る、そろそろ。眠いし。」

「えええええ」

「うるさいと置いていく。」

「イヤやぁぁぁあ」

「うるさ…置いてこ…」



伝票を取って席を立つと、むーーとか言いながらもついてくるシゲ。


私が会計済ませようと思ったけど、きょーはおごりやから！とか、変なとこはしっかりしてて結局奢ってもらった。

私が大好きな優しいところが急に見えて、胸がチクチクと痛んだ。





ふらふら歩くシゲをなんとか車まで導く。

肩を貸してるシゲの顔が近くて、あー鼻高いなーとか、まつ毛長いんやなーとか考えながら、こんな時でも、かかる吐息にドキドキしてる自分が本当に可笑しい。


こんな酒臭い息でも、シゲのならドキドキするなんて、ほんとに可笑しい。



これ以上肩を貸してるのは、私が酔ってしまいそうで、半ば無理矢理に助手席にシゲを押し込む。


「ねぇ、シゲ。家どこ？」


仲が良いとは言っても、流石に家にあがったことはないので、ハンドルを握りながら問いかける。



「んーーー？なに？おうちきいてもわからん！わんわん！！」


えぇーーーかわいいーーーーーー

じゃなくて！

「おうち言わな、帰れへんで？」

「う？くぅ〜〜ん？」


だめだ、会話できない。かわいいけど。




えーと、彼女持ちになろうとしてる男を家にあげるっていうのは…

いや、でも、このまま放置するわけにはいかないし…


…この場合は、


「しょうがない…」



よね？

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