2-11(ユエル) ページ39
「そうか…なら、早く見つけた方が良さそうだな」
アリスもその言葉に頷く。この世界で電波が通じるとも思えないけれど、意識してしまえばいつも手にしていたものがない状況は一抹の心細さを感じさせたのだ。
「そうだな…アリス、どこか心当たりはないか?」
「ええっと…私、ここに来てからのこと…あんまり覚えてないのよね。
最初は確か…そう、トランプ?に追いかけられて…」
「トランプ兵か…不味いな」
「え?」
ハッターの整った顔が苦虫を噛み潰したように歪んだ。
「
気付かず逃げちまった俺のミスでもあるが…あのクソ兎が荷物を見つけてるとしたら、面倒なことになる」
「面倒なこと?」
「それは…ああ、いや、今はいい。
どうせ明日の朝には分かるだろ」
ハッターの言う、面倒なことをアリスは考えてみる。思い付くのは、トランプ兵が襲ってくること、またチェシャやホワイトが襲ってくること、だろうか。
どの道、戦闘になりそうだ。
と、そこでふと窓を見てみると、真っ暗だ。
チェシャと話していな時も既に暗かったのが、今はより暗かった。完全な夜だ。
色々と濃すぎる一日だったが、逆に考えれば、まだ一日しか経っていない。いや、まず寝ていないのだから、一日すら経っていないのか。
ぼんやりとした様子のアリスに、ハッターはそろそろ休むべきか、と声をかける。
「とりあえず、アリスの荷物を探すのは明日でいいだろう。今日はもう寝るぞ」
「そうね。でも、私どこで寝たらいいの?
…あ。ソファと掛布団を貸してもらえれば、そこで寝るわ!」
「バッッッカお前仮にもレディをそんな所に寝かせられるか!」
「アリスさんならハッターの部屋でしょ?」
「ンッ」
最後のマーチの言葉に奇声をあげたハッターは、早口で「部屋を準備する」と言っていた。
さも当然、と言った様子で言ったマーチに、アリスも戸惑うのだった。
何せ、男女が一緒の部屋で寝るのだ。(それも恋仲でも無いのに!)
流石に…それは憚られる。
「あ、アリスさんの服、どうしましょうか」
「あー…服、かぁ。考えてなかったな」
「ねぇねぇ、それなら…待ってて」
服のこともどうするか考えていると、スリーピーがとたとた、と駆けていき、少しして戻ってきた。どこから取ってきたのか、手には大きな白いシャツが。
スリーピーから服を渡されたアリスは試しに着替えてみることにした。
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ユエル(プロフ) - クルルさん» コメありがとうございます!不定期更新ですが頑張りますね(^^) (2021年1月11日 13時) (レス) id: 673d6f73a6 (このIDを非表示/違反報告)
クルル(プロフ) - めちゃくちゃ面白い!!!!サイコーです!!続き待ってます!! (2021年1月3日 23時) (レス) id: 297c8a2c3d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユエル×日向なつ x他1人 | 作者ホームページ:
作成日時:2017年5月21日 1時