2-8(日向なつ) ページ36
アリスとハッターは煮込んだままのビーフシチューの存在を思い出し、あわてて調理を進めていた。
「っよし、これであとは…」
「あの二人を起こすだけ、だな」
「だね！」
「よし。アリス、悪いが盛り付けを頼めるか？
俺はチビ達を起こしてくる。スーリのやつ、あれで寝起きがとんでもなく悪いんだ」
(よかった。ハッター、ちょっとだけ落ち着いたみたい)
城で自分たちを襲ってきた彼…チェシャのことを、アリスは敵だとは思っていない。
「良かった」と呟いた、恐らくこちらに聞かせるつもりではない一言は安堵に満ちていて、とてもこちらを害するつもりがあるとは思えなかったのだ。
正直なところ、ハッターの語る過去を聞いて腑に落ちた思いだった。
(…少し、羨ましいな)
人数分の食事を皿に盛り、見様見真似でテーブルセッティングをしながらアリスは考える。
(私、昔から転校が多かったから…幼馴染とか、大事な友達とか。そんなの、居なかったな)
ハッターがもし、同じ世界の住民だったら。
もしも、同じ学校のクラスメイトだったら。
もしも…私の、「本当の」仲間だったらーー…
「ぎゃぁぁああああん！！！」
「うわーーーーーーーっ！？」
突然、窓がビリビリと震えるような大声が聞こえてアリスは飛び上がった。ちなみに上が謎の叫び声、下のセリフは驚いたアリスのものである。
アリスのバスケットボール部で鍛えた腹筋はそれなりの大声を叩き出したが、突然聞こえた声はそれを上回るように感じられた。
「ちょっと、ハッター！ 何があったの！？」
「びゃぁああああん！ うぇえええええん！」
「アリスさん、すいません。フルーツか甘いものとか無いですか？」
「アリス…悪い。夕食に出すブドウを一粒、持ってきてくれ…」
上から、2階に上がったアリス。
ベッドの上に座り込んで泣きじゃくるスリーピー…謎の声は彼女のものだったらしい。
そして長いウサギ耳をぎゅっと結んで耳を塞いだ冷静なマーチと、こちらは結べないので耳を抑えながら苦悶の表情のハッターだ。
「ええっと…うん、分かった。ブドウね」
一周回って冷静になったアリスは、階下へ果物を求めて降りながら考える。
(この世界ってゴジラのDVD、無いのかな。)
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ユエル(プロフ) - クルルさん» コメありがとうございます！不定期更新ですが頑張りますね(^^) (2021年1月11日 13時) (
レス) id: 673d6f73a6 (このIDを非表示/違反報告)
クルル(プロフ) - めちゃくちゃ面白い！！！！サイコーです！！続き待ってます！！ (2021年1月3日 23時) (レス) id: 297c8a2c3d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ユエル×日向なつ x他1人 | 作者ホームページ：
作成日時：2017年5月21日 1時
