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「う……っわあ……凄い……!」
「ふふ、そうでしょう? お気に召して幸いです」
ホワイトに手を引かれるまま、城――
白を基調とした装飾。ところどころに飾られた宝石は、おそらくはルビー(※1)だろうか。高級な家具は存在感を放ちながらも、それを誇示することなく静かに佇んでいる。それはまるで、優秀な兵たちが王の前に傅き、命令を待つかのよう。
「あたし、急に来ちゃったけど大丈夫なの? 女王様の許可とか……」
「基本的に、国政に関しない雑事は私にお任せいただいております。入城の許可に関してもその範囲ですよ」
「へえ……」
(なんか……本格的にあたし、このひとの隣歩いてるの、ちょっと場違いね)
ちらりとホワイトを見上げる。ハッターに会った時も身長差を感じたものの、ホワイトは彼以上に背が高い。兎耳と同色の白い燕尾服もその長身をよく引き立て、大人らしさと気品を醸し出していた。
(……格好いい、な)
「それから、ここが温室で……アリスさん?」
「ぅえぇっ!? なっ、何!?」
「何……は、私の台詞かと……ふふ。何を緊張されているんです?」
「き、緊張なんて、別にっ! あたしはただ、……場違い、かなって」
「場違い、ですか?」
ホワイトが緩やかに首をかしげ、こちらを覗き込む。やわらかく細められた瞳は甘やかな赤。温室に咲き乱れた美しい薔薇のように、混じりけのない赤色だ。さらりと落ちたひと房の髪が前髪に掛かり、薔薇の上に新雪が舞い降りる。
「……綺麗、だから」
気が付けばアリスは、そう言葉をこぼしていた。
「ホワイトさんが、……綺麗だから。あたしなんかとは比べ物にならないくらい、綺麗で格好良くて、……ちゃんと、ここに居るって感じがする」
「アリスさん……」
*****注釈*****
※「ルビー」:赤い宝石として有名なルビーですが、実は赤紫に近いものが多くあります。ルビーとしての価値は、『赤紫<赤<深紅』の順に高くなり、黒く見えるほど深い赤は本当に価値の高いものなんだとか。ホワイトさんたちが持ってるルビーはだいたい深紅だと思っといてください(笑)。……ちなみに、ルビーの宝石言葉は「熱情」「純愛」などがあります。ちらっと覚えて読みすすめてもらえると、後半で幸せになれる……かもしれませんので、ひとつよろしくどうぞ。
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ユエル(プロフ) - クルルさん» コメありがとうございます!不定期更新ですが頑張りますね(^^) (2021年1月11日 13時) (レス) id: 673d6f73a6 (このIDを非表示/違反報告)
クルル(プロフ) - めちゃくちゃ面白い!!!!サイコーです!!続き待ってます!! (2021年1月3日 23時) (レス) id: 297c8a2c3d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユエル×日向なつ x他1人 | 作者ホームページ:
作成日時:2017年5月21日 1時