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ようやく教室を抜け出し、アリスはうんん、と背伸びをした。
空は秋晴れ、まさしくその言葉がふさわしいほどの快晴。涼しくなってきた気候に制服のブレザーが丁度良い。
「えっと、30番手の、色は……403番(※１)、っと」
手芸店に寄ってから帰るなら、少し遠回りになるけど公園を通ったほうが早いわね。脳内でそう判断し、アリスは進路を変更した。夕方というには少し早いこの時間帯、一通りは少ない。ほどなくして見えてきた緑色のジャングルジムに、アリスは足を止めてそれを見上げた。
「あ……ここ、ミドリ公園に似てるかも」
幼いころ、よく遊びに来ていた公園によく似ている。その思いつきとともに懐かしさが蘇り、アリスは鞄をベンチに置くとジャングルジムに足をかけた。幸い人通りはないので、スカート姿はあまり気にしないことにする。
(うわー、なっつかしい……そうだ、“あのとき”も)
まだ幼いころ、はじめてジャングルジムの一番上に登った日を思い出す。
あの日アリスは見晴らしの良さに心を奪われて、両手を離してジャングルジムの上に立ったのだ。
――うわあ、きれい……。
――ビュウッ、
――うわあっ！？
――危ない！
強い風に煽られて落ちかけたアリスは、間一髪『誰か』に抱きとめられて事なきを得た。恐怖でわんわん泣くアリスに、その『誰か』はぽんと頭を撫で、きれいな青色のリボンをくれたのだ。顔も声も思い出せない、かろうじて男性であったことと黒いラペルピン(※２)だけを覚えているそのひとは、アリスの淡い初恋だ。
(今なら手を離しても、落ちないんだろうけど)
アリスはゆっくりと手を離し――
「すみません、そこのお嬢さん！」
「ぅえぇ！？」
――やばい、落ちる！
＊＊＊＊＊注釈＊＊＊＊＊
※１「30番手の403番」：糸の太さと色を表す言い方。30番手は太めの手縫い糸、403番は生成り色のことを言います。布と糸の色を合わせたい時や誰かに糸を買ってもらう・通販で糸を買うときなんかに、番号で選ぶと間違いがなくて便利。あとちょっとプロっぽい気がして気分がいいです(おい)。
※２「ラペルピン」：主に男性のスーツで、襟のあたりに付ける飾りのこと。昔は他の人の服と見分けがつくように付けていたそうですが、現代日本だと内ポケットに名前入れちゃうからあんまり出番がありませんね……。色んなデザインがあって、見てるだけでも楽しめます。最近では女性でもアクセサリーとして身に付ける人がいるそうです。
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ユエル(プロフ) - クルルさん» コメありがとうございます！不定期更新ですが頑張りますね(^^) (2021年1月11日 13時) (
レス) id: 673d6f73a6 (このIDを非表示/違反報告)
クルル(プロフ) - めちゃくちゃ面白い！！！！サイコーです！！続き待ってます！！ (2021年1月3日 23時) (レス) id: 297c8a2c3d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ユエル×日向なつ x他1人 | 作者ホームページ：
作成日時：2017年5月21日 1時
