告白その14 ページ15
*
映画館を出ると、外はもう薄暗くなっていた。
夜は冷えるこの季節。
薄手のワンピースを着てきた私は、そっと腕をさすった。
少し寒いな。
「A、これ着ろ」
そう差し出されたのは、先程まで轟くんが羽織っていたシャツ。
「でも、轟くん寒くない?」
「俺は大丈夫だ」
彼の言葉を信用し、シャツを受け取る。
腕を通すと、ふわりと彼の匂いがした。
「ありがとう、轟くん」
「あぁ」
さっき観た映画のせいなのか、しっとりとした空気感。
何かを話すわけでもなく辺りを散歩する。
公園に入ってベンチに腰掛けると、轟くんはゆっくりと口を開いた。
「どうして好き同士なのに幸せになれないんだろうな」
彼が言っているのは、恐らくさっき観た映画のことだろう。
結局、少女は死んでしまった。
「みんな、必ずしも全部上手くいくってわけじゃないのかもね」
空を見上げながらポツリと呟く。
「轟くんだって、辛いことを乗り越えて今があるでしょ?」
私も、そうだ。
たくさん悲しいことを乗り越えて、こうして幸せな日々を過ごしている。
「もしかしたら私、辛いことがなかったら轟くんに会えてなかったかも」
そういってニコリと笑うと、轟くんはほんの少し目を見開いた。
「Aにも、辛いことがあったのか?」
「んー、轟くんに比べたら全然だけどね」
ずっとしまっていた思い出。
ちょっとだけ、辛かった出来事。
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婾纚儺 - ほっこりホコホコ (2018年12月2日 8時) (レス) id: abf7718af2 (このIDを非表示/違反報告)
れの(プロフ) - メダカさん» ほっこりしていただけたのならとても嬉しいです!コメントありがとうございます! (2018年8月25日 22時) (レス) id: 6cc8b71c99 (このIDを非表示/違反報告)
メダカ - 番外編も可愛かったぁ〜(*´∀`*)ほっこり(*´`*) (2018年8月25日 18時) (携帯から) (レス) id: 238af52e71 (このIDを非表示/違反報告)
れの(プロフ) - 杏さん» わかりにくくて申し訳ありません!もともと急須にお茶が入ってて、その急須に入っているお茶をティーカップに注いでいるという状況です。 (2018年8月21日 10時) (レス) id: 6cc8b71c99 (このIDを非表示/違反報告)
杏 - 急須にお茶いれてるんじゃなくて、ティーカップなんですか?? (2018年8月21日 9時) (レス) id: 664b772586 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:れの | 作成日時:2018年8月19日 21時