酒場のマスターはトリッパー II

77杯目 ページ31

フッーー

突然目の前が真っ白に輝いて目が眩んだ。

足の力が抜けて倒れそうになったが、誰が受け止めてくれた。

「大丈夫かいマスターっ!?」

「ぁ、ざい、さっ」

今にも泣きそうな声が出た。

「太宰さんの新しいお友達、ずいぶん壊れやすいんだね」

Qちゃんの声が聞こえる。

「けどいいんだ！ 太宰さんを壊す楽しみが残ってるもの☆」

そっか、異能にかかってたんだ・・・

太宰さん、怒ってる。

顔は見えないけど声でわかる。

列車の音が遠のいていく、Qちゃんは行ったのか。

「マスター立てるかい？」

「・・・」

「マスター？」

「あいつ、笑ってた」

「？」

「笑ってたんだ、笑ってないけど笑ってた」

「・・・」

「あの時は叩いてごめんね！ 自分勝手とか言っちゃってごめんね！ それは私の方だった！」

「あいつは全部わかってた！ 私にそんな資格ないって、私なんかが願っ、て・・ 嫌だ、もう嫌・・・」

頬を何かが伝う。

「こんな思いはもぅいやぁ、いなくなってしまえば、私なんか、いなく・・・」

嗚咽が漏れる、あぁ泣いてるんだ。

「自分を憐れむなって言われても、そんなの無理だよ・・・。だって人は、自分を憐れまないと自分を保てないんだから・・・」

「・・・ナオミちゃん、マスターをお願い」

「うっ、ぅ゛、」

太宰さんは私をナオミちゃんに預けて敦君の元へ行った。

「確かにそうかもしれない。でもねマスター」

パァンッ！

「自分を憐れめば人生は終わりなき地獄だよ」

それでもいい。

だってもう地獄なんだから。

78杯目→←76杯目

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す