酒場のマスターはトリッパー II

51杯目 ページ4

僕は酒場を出て裏路地の奥へと進んでいった。

ああ、今日も可愛かったなぁ・・・

元気そうでなによりだよ。

しばらく進んだ先建物の壁に寄りかかっている人影がひとつあった。

その人影はやぁ、と一言呟きこちらへと近づいて来た。

「君かい、マスターのストーカーは？」

「ストーカー・・・ それは貴方のことでは？
こんなものを店につけて」

僕はポケットの中から黒い小さなものを取り出し見せた。

そう、盗聴器。

彼は軽く笑い、よくわかったねと言った。

「しかし勘違いしないでほしい。
それは君の事を調べるためにつけたものだ。
必ず店に来ると踏んでね」

それだけじゃないくせに。

「乱歩さんが止めなければ今頃君を捕まえて尋問しているところなのに・・・」

「ならしてみろよ


ーーーー元ポートマフィア幹部」

「フッ)余裕だね」

顔は笑っているが目に光はない。

あぁ、せっかく幸せな気分だったのに台無しだ。

「先に言っておく、あの子を幸せにできるのはこの僕だ！ あの子は僕のものだ！！」

「随分と独占欲が強いようだけど、その割にやっていることがあまりにも矛盾している」

「・・・・・・」

「客を呼び寄せたと思ったらドアの穴から中を覗き見て監視・・・。どうかしている」

「・・・お前達には理解できないことだ」

「だろうね、する気もないさ」

わずかな沈黙が流れる。

互いに睨み合いを続け、それを先に破ったのは僕だ。

「・・・まぁいい。今日のところは引き上げるよ。
あぁそれと、」

自分でこれを言うのも悲しいな。。

「あの子は貴方や僕に対して恋心なんか微塵も抱いてないよ。
あの子にはすでに好きな人がいるからね」

「⁉ へぇ、何で君にわかるんだい？」

「わかるさ。ずっと見てきたからね」

そう、昔からずっとーーーー






君の幸せだけを願って。

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