【REBORN】何が一般的かなんて分からない (ページ47)

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+９４+零れる炎ページ47

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花火に対する歓声が背中越しに聞こえ始めた頃
「並盛神社」と掘られた門柱の背面とそれに凭(もた)れ掛かる姿が見えた

多くの人が屋台が並ぶ奥の表道に集まり
少しシン、とした空間では私の下駄の音と花火の轟音のみが響く

故に、２０メートルもない距離に立てば
花火の音にも負けず、足音が彼の耳にまで届いているだろう。

彼はズボンのポケットに手を入れ、足を組み門柱に凭れ掛かったまま
視線だけを空からコチラに移して私を見つめた。

沢田くんらと話していて少し予定より時間がかかったという
私の中で失態と認識されたそれ(・・)により視線が痛く感じた。

思わず歩く速度は少し遅くなり、視線は下を向いてしまう。

それでも立ち止まることはなく次第に近付いた距離。
最終的には少し腕を前に持ち上げるだけで触れそうな距離に。

『すみません…遅れました。』

私の発言を聞くと数秒間をあけ「行くよ」と短く言葉を呟いた

踵を返し、そのまま歩くがいつもの迷いない足取り…
スタスタと周りに見向きもしない少し早めの歩調ではなく

普段は最凶だなんだと畏怖される恭弥さんの優しいところを見られた。
こういうところを表に出せば少しは面倒事が減るだろうに。

そう思うが、今更優しさを他者に見せる彼は想像がつかず
無理矢理作った脳内の「優しい雲雀恭弥」というのも違和感まみれ
私の中でも『彼は今のままでいいな』という結論に至った。

並盛の祭りは花火の発弾数が多い

施設にいた頃から部屋で鳴り響く轟音をＢＧＭに勉強に励んだ

複数人いたルームメイトや他の部屋の子らが外に出て
花火を眺めにベランダに向かって走る楽しげな後ろ姿を思い出す

そう言えば、誰かと花火を見る…なんてこと初めてかもしれない。
いや、前にあったのかもしれないけど…覚えていない

そもそも夏には苦手意識がある

ふと、誰も彼もが目を奪われるそれを見上げた

今ならなんとなく、彼らがこれの為に施設の人に怒られながら走った
その理由が分かる、かもしれない。

『…綺麗。』

そう呟いた時の花火は一番大きかった

先程の複数の花火が空を彩っていたのに対し
こちらはこの一発。しかし光の強さは変わらない力強さがあった

その輝く炎が空から零れるように、降り注ぐように輝き
最後には暗い空に吸い込まれ、消えた。

その瞬間の儚い美しさ

儚くも美しい、艶やかな花火

これを目の前にしたら多少怒られた所で気にもならなかったんだろう