-21-小さな温もり ページ24
【XANXUSside】
夜。窓辺で空を見ていた時その声は聞こえた。
「〜♪〜♪♪」
(この声は…)
透き通った美しい声。
いつもならただじっと声に身を委ねるが、今日は何故かその声の主の元へ行かなければと思い部屋を出た。
-バルコニー-
気付かれないよう気配を消して、そっと扉を開けた先に彼女はいた。
「久しぶりに聞いたな。てめぇの歌は」
「聞かれちゃった」
その声には覇気がなく弱々しかった。
何かあったのは明白だった。
「何かあったか」
「ん？いいや、何も……」
いいやもクソもねぇ。そんな眉尻を下げて哀しそうに笑われても信憑性が全くねぇ。
俺の前で強がるアイツが何だか嫌で、俺はあいつの横に行き無理矢理自分の方を向かせた。
「俺に嘘をつこうなんざ100年早ぇよ」
「ホント強引」
それでも視線を背け言わないA。
俺にそんな事が通用するとでも思ってんのか？
白い肌に手を滑らせ、顎に手を当て自分を見させる。
視線なんて逸らさせねぇ。俺を見ろ。
「……私の嫌いな眼鏡に突っかかって来られたから…」
あの野郎…俺のAに……
だが、コイツの本当に言いたいことはまだ別の事だ。
「それだけか」
「ーっ…！！」
じっと金の瞳を見つめる。
揺れる瞳…ふっとその瞳に影が落ちる。
「貴方は私の事…どう思ってるの？」
その言葉に俺はつい吹き出した。
「笑ったなっ！？人の不安を笑ったなっ！！！」
むっすーっと頬を膨らませて俺を見上げるA。その姿に俺の胸の中に擽ったい気持ちが溢れてきて、誤魔化すように頬を潰しその唇にキスをした。
「ーっ……は、なっ…！？」
さっきまでしょんぼりしていたやつが、今度は顔を林檎のように赤くしてワタワタしている姿にまた笑いがこみ上げてくる。
(こういうのを可愛いと言うんだろうか)
そっと頬を指で撫で、こいつの欲しがっている答えをやる。
「信頼し、信用して隣に置いている」
その言葉にピタリと動きを止めたA。
「でなければわざわざお前を探してまでここに連れて来ねぇ」
お前は知らない。俺が何故こんなにも隣に置いておきたいかなんて。
「てめぇは俺の隣にいればいい」
離してなんてやるものか。お前は、俺だけのものだ。
ぎゅっと俺より一回り小さな身体を抱きしめる。
「絶対に、俺の傍を離れるな」
この想いは、胸にあるこの擽ったさは、一体なんと形容するのか。
今の俺には、分からなかった。
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作者名：紅雪 | 作成日時：2019年4月7日 3時
