炎の狂った愛を受け止めて。弐

ごじゅういち＊ ページ1

「ん、もう…朝」





ゆっくり体を起こす。
見慣れない景色であれ、と考え、





「あぁ、そうだ、旅行に来てたんだ」




隣を見ると、気持ち良さそうに杏寿郎さんが寝ている。
あぁ、そうだ、朝風呂って確か朝食の後に行けるんだよね。


空いているといいな。
今日、きっと帰るだろうから……朝にお風呂入って帰りたいな。





「杏寿郎さん」
「む……A…」




ギュッと腰の辺りに抱きつかれる。



「もう、杏寿郎さん」



そっと頬包み込んで、優しく瞼に口付ける。



「…起きて、杏寿郎さん」
「A、もっと……して欲しい…」




ゆっくり目を開けて、縋るような目で私を見つめる。
あぁ、そうだ。杏寿郎さんは旅行で精神ボロボロなんだよね…。


杏寿郎さんは独占欲が並の人とは桁違いらしい。


最初はそれが嫌だったけど、最近では、それが杏寿郎さんなりの愛し方で、
浮気もしないし、大切にしてくれるし(躾は除く)、一途に私を想ってくれているから、彼の愛を受け止めようと思うようになった。時々怖いけど。



私だって彼が大好きだ。
離婚なんてするつもりは無い。



額、頬、耳元へと口付けていく。




「A」
「…杏寿郎さん？」
「唇、唇にたくさんして欲しい……ダメか…？」




私は首を横に振って、何度も唇を重ねた。








＊＊＊






「A」


部屋を出て、大広間で朝食を食べていると杏寿郎さんが箸を持っている手を握ってきた。


「…？」
「今日は観光でもするか？腰が大丈夫なら……行こうと思っているのだが…」
「え……」


ふわりと心が舞い上がる。
絶対この後帰ると思っていたから。




「い、行きますっ…！」
「そうか、なら行こう！」



目を細め優しく笑う杏寿郎さん。
もう大丈夫なのかな…？


「…本当に大丈夫ですか？無理していませんか？」
「君が離れなければ、まだ大丈夫だ」
「辛かったら、言ってくださいね…？」
「うむっ！」






明るい返事が聞けて、私は嬉しくなった。

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