なな ページ8
*
『あれ、A帰ったんだ？』
｢なんじゃ、気づいとらんかったのかえ｣
てっきり無視しとるもんじゃと、と続ける朔間さんの言葉に何故かあんずちゃんがばっと顔を上げる。
｢わ、私先輩にご挨拶もせずに…！｣
わたた、と手をばたばたさせて慌てる様子はこの子以外がやったらあざといと思われるようなものだったが、そのしょんぼりした表情に本当に申し訳ないと思っているのだと感じられた。
『いいんだよAは挨拶とかそんな柄じゃないし』
昔から音楽のことばっかりで、人とろくに関わってこなかった彼女はあまりよく知らない後輩から話しかけられるのは苦手だろうから。
突然話しかけられたことにびっくりして素っ気ない態度をとってしまうことを悩んでいた彼女を知っているから。
…まあもしかしたら今はそんなことないのかもね。
｢…薫くんに嬢ちゃんや｣
『なぁに、朔間さん』
もう日も落ちかけた夕方だと言うのに、棺桶から出ずにちょいちょいとこっちを手招きする朔間さんに俺とあんずちゃんが近づく。
｢我輩たちがやる曲が決まったんじゃがのう、一応見ておいてくれんか｣
譜面を手渡されたけれど残念なことに俺は楽譜が読めない。
あんずちゃんもそうみたいで首をしきりにひねっている。
…筆跡には見覚えあるけど、あの子は俺たちアイドル科に曲を提供することはこれまで一切なかったから、この曲も月永くんあたりが書いたのかな。
｢2人とも、ぴんときておらんようじゃのう…｣
よっこいせ、と棺桶から立ち上がり、部室のアコースティックギターを1本選んで抱える。
普段歌って踊って、たまにの軽音部としての活動の時なんかにエレキやドラムをやる程度なのに、アコギからはとてもそうとは思えない綺麗なメロディがつむぎ出される。
爽やかで、でもどこか切なくなるような綺麗な旋律。
アイドルをやっていながら、音楽にはまるで触れてこなかった俺にはよく分からないけど、泣きたくなるような心地。
あぁ、この感覚、よく知っている。
『ねえ朔間さん、この曲作ったのって、』
｢おぬしが、一番よく知っているはずじゃよ｣
最後まで言わせないとばかりに、しぃ、と人差し指を唇にあて、魔王は微笑む。
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ちより(プロフ) - 度々過去編のお話が入るのが凄いなって思いました…！！読みいるしすごく違和感のないお話に出会えたのは久しぶりです…！自分のペースで無理せず更新していってください、待ってます！ (2020年1月5日 3時) (
レス) id: 5d8f01d30c (このIDを非表示/違反報告)
Linon(プロフ) - 泉が可愛すぎてキュンキュンしますううう (2019年12月16日 1時) (レス) id: c9d9ceb5f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆゆちゃん | 作成日時：2019年11月28日 18時
