噛みついて、奪って、そのまま蕩けて。【弐】

陸拾壱 ページ26

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｢なに、そんな寂しそうな顔してさ。…もしかして、Aは、俺と別れるの、寂しい？｣

｢───っ｣







………寂しい。

今まで、こんな感情抱いたこと無かったのに。


家ではいつも要らないもの扱いで、何か口を開けばその百倍になって返ってくるから、いつからか自分の感情を殺すのが当然になっていた。

寂しいなんて感情、抱いてはいけない。両親(あの人たち)からの愛を、求めてはいけない。





ぽかりとわたしの胸に空いた空洞は、いつもあるのが当然で。



けれど、うらたさんや、さかたさん。

志麻にいさんや、センラさん。



……彼らの温もりを、優しさを、知ってしまったから。

だからきっと、今までの何倍も、寂しく感じてしまうんだ。


｢………はい。さびしい、です｣

そうハッキリ口に出すと、うらたさんが目を見開いて驚いたのが伝わってきた。
迷惑だったのだろうか、と思ったが、どうやら違ったらしく、彼は心の底から嬉しそうに微笑んだ。




｢ほんとかわいいね。A。そんなこと言われたらさァ、俺───止まんなくなりそう。｣

…何が、とは敢えて聞かなかった。
いつの間にか当然のように繋がれていた彼の手をぎゅ、と握りしめるとそれだけで頭を優しく撫でてくれる。

いつの間にか、あれだけ気になっていたはずの女の子や、すれ違った人達からの視線は、気にならなくなっていた。




｢…今は、まだ分からないかもしれねぇけどさ。

いつか、俺の手だけを取ってくれよ｣


そう囁かれて、わたしは再びこくりと首肯した。


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