辻村の憂鬱4 ページ12
綾辻先生は一旦言葉を切って煙草の煙を吐き出した。
私の後ろに直立不動で佇むAさんに目をやり、命じた。
綾「A、珈琲」
A「はい」
買い物袋を置いて珈琲ミルに手を伸ばすAさん。
その動きすら人形のようだ。
買い物袋から見えた人参と玉ねぎ、卵その他諸々の食材。
食材の買い出し…………………に行ってたのかな?
辻「ということは、まさか綾辻先生。
特務課に何も言わずに、彼女をここでずっと匿ってたんですか?!」
なんて人だ!
軍警が探し回っていただろう人をこの5年…………………。
頭が痛い。
とにかく先輩に報告しないと。
辻「あ、先輩。もしもし、辻村です。
実はですねかくかくしかじかでして」
坂「そうでしたか。それは大変ですね」
辻「いや、全然大変っていう口調に聞こえないんですけど」
先輩の口調は「ああ、予想してましたけどやっぱりそうでしたか」という感じだった。
…………え?知らなかったの私だけ?
坂「予想していたというわけではありませんが、その可能性もあると踏んでいましたから。
あ、今日の報告書には彼女の外出方法なども記載してくださいね」
プツリと通話が切れ、Aさんが無表情で淹れたての珈琲を差し出していた。
珈琲の香りは芳醇でほろ苦く、とてもいい匂いがしていた。
私が淹れた珈琲よりずっと上手い。
辻「ありがとうございます………あ、美味しい」
悔しいけどすごく美味しい。珈琲を飲みながら綾辻先生の前にも珈琲を置くAさんを見る。
この人は−−−−−−−−−−何を思って綾辻先生のところにいるのだろう。
もう5年経ったのだ。
いつまでも記憶に縛られなくても。
綾辻先生のところから離れて特務課の保護のもとで生活することもできる。
辻「Aさんは、綾辻先生のところから離れることは考えないんですか?」
綾辻先生は、じろり、と私を睨んだ。
辻「だってそうじゃないですか。離れて、生活を送ることもできるんですよ?」
綾「君にAの何が推し量れるんだ?
俺はこいつを手放すつもりはない」
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乾 巽(プロフ) - 赤珠さん» 同い年ですね! (2019年8月17日 21時) (レス) id: a46352e6e0 (このIDを非表示/違反報告)
赤珠 - 乾 巽さん» 同い年……オーマイガァー (2019年8月17日 20時) (レス) id: 8dc3cc174c (このIDを非表示/違反報告)
乾 巽(プロフ) - 赤珠さん» ありがとうございます、そんなこと言われたの初めてです。因みに年は今15です (2019年8月17日 11時) (レス) id: c1b6b5f4c6 (このIDを非表示/違反報告)
赤珠 - 文才力の塊……。その文才わけてください← この小説とても面白くて大好きです!!私も作者様と年変わらないと思うので……羨ましいです……。 (2019年8月17日 11時) (レス) id: 8dc3cc174c (このIDを非表示/違反報告)
乾 巽(プロフ) - ありがとうございます、頑張りますね (2019年8月10日 10時) (レス) id: c1b6b5f4c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:乾 巽 | 作成日時:2019年1月23日 16時