第148話：緊急事態 ページ5
｢────……っ」
いやだめだ……落ち着け。
僕が焦ればAを不安にさせるだけだ。
声を荒らげるのを抑えて、なんとか表面だけでも冷静に言葉を紡ぐ。
今僕ができることは何だ。
掛けられる言葉は。
次にすべきことは。
僕は立ち上がり、自分の携帯だけ掴むと更衣室を飛び出した。
｢今は走ってるんだな、携帯のGPSで場所はわかる、」
喋りながら体育館の出口に向かう。
携帯を使っているのが数人に見られているが、今は気にしている場合では無い。
「
返事はしなくていい、あと少し耐えてくれ、
大丈夫、すぐに行く……！」
言い切った後携帯のマイク部分を指で覆い、連れていくべき彼の名前を呼ぶ。
僕だけは、彼がどこにいても見つけることができる。
「……テツヤ！来てくれ！」
体育館に響いた僕の声は彼の耳にもしっかりと届いており、すぐに駆け寄ってきた。
「どうかしました？……あれ、その携帯って……」
「緊急事態だ。細かく説明している暇は無い、とにかく着いてきてくれ。
────Aの身に何か起こっている」
「……！！」
目を見開く黒子。
僕が黒子の携帯を手にしていること、その画面、そして緊急事態という言葉から意味を即座に理解したらしい。
こういう時の黒子の臨機応変さと行動力はありがたい。
「……すぐ行けます！」
体育館の出口に向かい、靴を履き替えて転がるように飛び出す。
携帯から聞こえてくるAの息の上がった声と足音、ところどころに聞こえる男性の怒声のような雑音から、事態は一刻を争うことがわかる。
「Aはそこのコンビニでの買い出しの途中、何者かに追われているらしい……！
Aの居場所はこの点滅している印だな？
今ならまだ間に合うかもしれない、行くぞ！」
「はい！」
信号も車通りも無い道路を飛び越えるように渡り、携帯の画面上に点滅する印の方角に向けて最短距離で向かう。
印が動いているということはまだ捕まっていないはず。
「……！赤司君、待ってください！
あれ……！」
「なんだ！？」
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作者名：Mae | 作成日時：2020年12月15日 1時
