第241話:理由 ページ6
え、だって、つい昨日までもずっと合宿で一緒の場所にいたのだし……今日も会いたくなっただなんて、用事でなければ目的があったのでは、と思うでしょう。
それこそやましい目的とか。
そうじゃないなら、どういう理由で私に会いたいと思ったのか、これは自然な疑問だと思うのだけど。
彼は数秒天を仰いだのち、「こんなこと僕から言わせるなんて、君もなかなか。」と前置きしてから。
「好きだからだよ。
Aのことが好きだから、Aに会いたくなった。」
私の頬をしっかり掴んで、目を離せなくしてからそう言いきった。
「……!」
「まぁ、昨日テツヤとの電話でAの話が中心だったから、というのもあるだろうけど。
理由や用事も無く、ある人に会いたくなったり、触れたくなったりする。会えたら嬉しくて、でも会えない間はその人のことをずっと考えてしまう。
好き、って…そういうことなんじゃないかと、今僕は考えたよ」
赤い瞳と細長い綺麗な手が、私を捕まえて逃がさない。
「そういう、ふと会いたくなった時に、遠慮や許可無しに会っていい、そういう二人の関係を恋人と呼ぶのかな。
遠慮はなくとも配慮は必要だけどね。」
「そういう……ものですか」
彼なりの理由、もとい理屈を呑み込もうと、首を傾げて頭を働かせる。
なんだか飛躍している話のようで、でも私が知らないだけなのかもと思ったり。
まだ納得のいかない渋い顔をして考え込む私を見て、赤司さんがおかしそうにクスクスと笑っている。
「ふふ、Aが「好き」ってどういうことか教えて欲しいって言ったんだろう。
今咄嗟に考えてはみたけれど、改めて言葉にするとなんだか恥ずかしいね。」
そういう彼はあまり照れてるようには見えない。
なんなら私は面と向かって「好きだから会いたかった」と言われたことに照れ臭さが込み上げてきているところである。
保健室の時に言った自分の恥ずかしいセリフも引き合いに出されて2倍で恥ずかしい。
そっか、私そんな風に言ったっけ。
「一昨日も言ったけど、僕だって好きな人には僕のことを好いていて欲しい。
それが「好き」が分からない君だと言うのなら尚更、こういう言葉の表現もしていくし、僕がどんな風に君を好きなのかもこまめに伝えていかないとね。」
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白虎 - 赤司くんはやっぱりカッコイイですね〜 (7月21日 10時) (レス) id: eab1ac402f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Mae | 作成日時:2022年4月19日 19時