俺の焼きたてメロンパン冷めるんだけど【名探偵コナン】

メロンパンの思索 ページ2

明け方。

１人車を走らせる。

レンタカーに残った他人の匂いに少し眉を顰めて、窓を開けた。

静かな街を走るのに音楽やラジオをかけるのは無粋に感じて、無音のままの車内。

ふと思い出した記憶。







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灰色のどんよりとした曇り空。

空けた窓に肘を置いて、爪楊枝を咥えた伊達ちゃんが運転席に座っている。

俺は助手席で、伊達ちゃんと反対の肘を空いた窓においていた。








「ねぇ、伊達ちゃん。俺が死んだら、墓には花じゃなくてメロンパン供えてね」

「どうした？急に。･･････あぁ、そうだな」








もうすぐで殉職した同期２人の命日なことに気づいた伊達が軽く頷いた。








「伊達ちゃんは何がいい？お供え物」

「ああ、そうだなー、俺も花ってガラじゃないし、爪楊枝がありゃいいかな」

「ふーん。らしいね」

「松田や萩原は何が良いんだろうな」

「アイツらも花はねぇな。松田は･･････爆弾とか？」

「墓爆破してどうすんだよ」








ケラケラ笑えば、伊達ちゃんも少し頬を緩ませてつっこむ。








「萩原は車だな」

「デカすぎるって。供えきれねーよ」








今度は２人で声を上げて笑った。








「11月7日、お前もいっしょに墓参り行くか？」

「･･････いや、その日は俺、本庁に１日泊まるから」

「･･････そうか。無理しすぎんなよ」

「ったり前よ。それにどうせゼロもいっしょだろ？ヤダヤダ。喧嘩する未来しか見えない」

「ハハ。それは困る」








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目的地に着き、車を降りた。

手を擦り合わせて息を吐きかけて暖を取る。

もうすぐ春だというのに朝は寒い。







「よぉ、久しぶり」







伊達家之墓と書かれたその前でかがんだ。







「爪楊枝･･････誰か置いてったのか。まあ俺も持ってきたし、これも使えよ」







トンっと爪楊枝をもう１本隣に並べる。

一通り墓の掃除をした後、花を供えて、墓の前にもう一度屈んだ。







「花はガラじゃねーかもだけど、供えとくぞ。もうすぐ春だしな。それに爪楊枝だけじゃ、寂しいし。

･･････それと、俺、勇気出してみようと思うんだ。だから、背中押してくれよな、伊達ちゃん」







俺の立ち去った後の墓に、グラジオラスが凛として咲いていた。









＿＿＿＿グラジオラス《Gladiolus》

「strength of character(人格的強さ)」
「sincerity(誠実)」
「preparedness(準備)」
「remembrance(記憶)」

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