貴方の腕の温もりは

温もり はたち あまり よっつ ページ24

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「逆に言うとね、今までよく初期段階の症状に抑えられていたものだよ」




10歳で発症して、今日まで・・・




「ALSの症状は、全部で４つある」




先生は真剣な目で、私を見る。




聞かなきゃ、ダメだ・・・




そう思わせる眼差しだった。




「運動障害、コミュニケーション障害、嚥下障害、呼吸障害だ」




呼吸も・・・




“呼吸障害”という言葉だけで不安になる。




「美門君は、ついに４つめの症状を発症した」




そんなっ・・・！




今までで、３つも発症していたの・・・？




「今までのは、リハビリで何とか出来ていたんだけどね・・・」




先生の声色は、ドンドン暗くなっていった。




「４つめ。呼吸障害は、どうしようもない」




え・・・




どうしようもないって




「あぁ、人工呼吸器をつけるのなら、別だけど」




先生は、またしても顔を歪める。




「でも、人工呼吸器を取り付ける手術をしなければならない」




私は息をするのも忘れて、ただただ先生の話を聞いている。




何も、言えなかったんだ。




「その手術は簡単とは言い切れない」




人工呼吸器を取り付けるのにもリスクを負うなんて・・・




「じゃあ、取り付けなくても・・・」




先生は首を横に振った。




「取り付けなければならないところまで、来てしまったんだよ」




そう言う先生の顔は、悲しみに溢れていた。








　





「今日、美門君が倒れたのは、呼吸困難を起こしたからなんだ」









　





・・・呼吸、困難。




そこでやっと、先生の言葉の意味が分かった。




人工呼吸器を取り付けなければ、翼は助からない。




人工呼吸器を取り付ける手術に成功しなければ、翼は生きられない。









「手術に成功したら、翼は生きられますか？」









先生を、しっかりと見つめる。




手術を成功させれば、きっと・・・！




そう言う期待を込めて。









「・・・しばらくは、生きられるだろうね」









　









けれど、返ってきたのは残酷な答えだった。




「えっ・・・？」




しば、らく・・・？




「人工呼吸器という手は、ただの時間稼ぎにしかならないんだ」









どうして、どうして・・・









「人工呼吸器にも、期限があってね」









どうして、神様はこんなにも残酷なんだろう・・・

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