番外編?:独り歩む another story ページ16
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「探偵社では、重傷は無傷と一緒だ」
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爆風に瞑っていた目を開けると、人は減るどころか一人増えていた。
堀と目を見合わせる。
堀の目は、なぜ生きているのか、その疑問と驚愕が表れていた。
今の爆発音は明らかにあの空間から出ている。
しかし、その疑問は新たに表れた人の正体によって解決した。
「あれは、探偵社の」
「女医さんですね、与謝野さんとか言った気がします」
俄かに慌ただしくなって、反対側の線路から軍警が現れた。
「いいえ首領、なんでもありません。如何やら探偵社に怨恨のある奴の愚行のようです」
中原も首領との通信を切ると、愚痴を零し乍ら踵を返した。
「どうせなら太宰のポンツクでも襲って呉れりゃあ、一寸ァ楽しめたのに。まあ、あんな与太じゃあ如何にもならんか。……手前らもその娘とやらをさっさと探して帰れよ」
後ろ手に手を振って去っていく中原を見送ると、二人も気づかれぬうちに退散した。
駅の構内をうろうろしながら相談する。
「結局如何しましょう」
「取り敢えず、一回外に出よう。駅の外に出てないとは限らない」
改札の外に出ると、警察が集まっていた。
顔が割れていない二人は何食わぬ顔で通り過ぎる。
如何やら一段落ついたらしく、例の女の子と国木田と思わしき男も傍らに立っていた。
と、言うか完全に国木田だった。
「国木田さんに似ている人であることを祈っていた……!」
悲痛に胸を痛ませるAを一瞥した堀は、不意に足を止める。
「……ねえ、今の聞いた?」
「え?」
「国木田、だっけ。其の人があの女の子のこと、文って呼んだ」
はっとして振り返った。
女の子が何故かもじもじして、国木田が其れを無表情で見つめるというカオス図が出来上がっていた。
二人は会話に耳を澄ました。
「なあ、国木田」
「……理想莫迦なあんたには、どうせ嫁さんも彼女も居らんのやろ。その、如何しても言うんやったら……うちが……あんたの……」
二人は口をあんぐり開けた。
この女の子は恐らく幸田の娘で間違いない。
だが、よりにもよって、その子が今回の一件で武装探偵社の国木田に惚れてしまった。
なんてことだ、国木田の返しようによっては、後日黒蜥蜴をも撃退した探偵社に乗り込まなければならない。
さあ如何する、国木田独歩。
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作者名:のーと。 | 作成日時:2018年10月1日 22時