ルパンにて ページ12
.
「……
「何?治くん」
「彼女となにか関わりあるの?」
石川より幾らか年下の、あどけなさを欠片も表さない目が彼を射抜く。
港湾都市ヨコハマの暗部を取り仕切るポートマフィアの史上最年少幹部と恐れられている、その目にも動じず、むしろ穏やかに笑みを浮かべる。
「さあね。あの子が誰かと見間違えたんじゃない?」
先ほど、ポートマフィアの新入り安部Aが石川を呼び止め、恐る恐るといった様子でこう言ったのだった。
「……あの、何処かで、お会いしません、でした、か?」
石川は苦笑しながら言う。
「ぼくもあの子のことはさっぱり」
「……そう」
太宰は嘆息しながらハイスツールに腰かける。
石川もその隣に座った。
「相変わらず、
「仮令が悪いよ。……でも、その人が魔人なら、"ぼくは神"?」
冗談めかして笑う石川を他所に、太宰はぐでっと体勢を崩した。
「その顔、絶対に何か知ってる顔だ」
「はは、そう見える?」
「……まあ、私には関係ないけど。マスター、歯磨き粉をロックで」
「ありません」
「ソーダ割りは?」
「ありません」
「ないのかあ」
その様子を呆れたように眺めていた石川も、奥の酒棚を見やって、言った。
「マスター、それ何?」
「紅南高梅の梅酒でございます」
「ん、じゃあそれの緑茶割り。あとアスパラも頂戴」
太宰はげ、と石川を見る。
「変わってるね、
「何言ってるの、これが美味しいんだよ。治くんはどうするの?」
「……じゃあ私もそれにする」
「かしこまりました」
すると、太宰が急に半身を起こして石川を振り返る。
「今日は四人そろうかもしれない」
それと同時に客を知らせる鈴が鳴る。
二人分の足音が聞こえたかと思うと、赤毛の男と学者風の青年がひょっこりと顔を出した。
石川は苦笑する。
「……流石すぎる」
.
「うわしっぶ!しっぶい!」
「太宰君、石川君の言葉を真に受けてはいけませんよ。彼、織田作さん並に味覚どうかしてますから」
「うわー酷いな安吾くん」
「淳、アスパラ貰うぞ」
「どうぞ」
番外編?:独り歩む another story→←番外編?:林芙美子
115人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:のーと。 | 作成日時:2018年10月1日 22時