殺しとは ページ32
.
静かに佐々城さんを見つめる。
この人は、私が、殺した。
深く胸に突き刺さる。
『死』
『殺し』
いつか芥川さんが言っていた。
死を惧れよ
殺しを惧れよ
死を望む者
等しく死に
望まるるが故に
あまりに、生半可な覚悟だったのかもしれない。
ポートマフィアにしても、人を殺すにしても、自分には手に負えないことなのだ。
「…い…おい…おい!」
六蔵君の声で我に返る。
「急にどうしたんだ」
「……あのね、六蔵君」
「あ?」
自分でも無意識のうちに語りだす。
「私、今まで人を殺したことがなかった。私だってもともと一般人だったからね、自分の手は汚したくなかった。ポートマフィアだって、好きで入ったんじゃないんだよ。抜けようにも抜けられないしね。どうしたものかね」
しゃがみこんで顔をうずめる。
一人のポートマフィア構成員の顔が浮かぶ。
決して人を殺すことのなかった、最年少幹部と仲良しの最下級構成員。
「そうできればいいんだけどね……」
小さく呟く。
自分だって異能力部隊の長だ。
高校を卒業すれば、嫌でも人を殺すことになる。
「うーん死にたい」
言ってから気づいた。
その言葉を一番言ってはいけない人の前で言ってしまった。
3秒前の自分を呪いたい。
「と、いうのは瞬間的なものなので、心中のお申し込みは締め切りとさせていただきました」
その時の太宰さんの絶望にも似た目は一生忘れない。
77人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:のーと。 | 作成日時:2018年2月6日 18時