【短編集】瓶詰め彼らにこんにちは【m/z;m,n】

いつかのゆめのはなし ページ38

ぼんやりと、ゆめをみた





何時の頃かわからない、
そんな曖昧だけれど霞むことの無い、
確かにあの時楽しかったことは記憶に捩じ込まれ、刻まれ、しっかりと覚えているのに。




あの人だけは思い出せない。




名前はなんと言ったろう。
性別はどっちだったろう。
どんな声だったろう。
どんな笑顔だったろう。
どんな匂いだったろう。







どれも曖昧だけれど、あの人が自分の人生に少なからず影響を与えたことは確かなのだ。








会いに行こうか。
電話してみようか。
それとも、手紙を書こうか。




あの人は、今何処で何をしているんだろう。
自分は、それを知る術は何処にも無い。




.









.









.









.









.









.









.









.









.









.









.


...

いつのころからか、夢を見る。
ちいさくなった男女11人が目の前にいて、
彼らと少し非日常的な毎日を、それでも楽しく過ごしていた時のことを。




それもいつしか壊れることを、人間は誰しも本能として知っているのだ。

別れと言うものは必ず訪れる。
それはシ別だったり、転居だったり、離婚だったりと様々。




だけど記憶の中にハッキリとした、彼らとの別れの記憶が見つからないのだ。



まるでPC上から要らない書類データをすっかり削除してしまったかの如く。

それはきれいさっぱりと。







そしてまた、今日も目が醒める。









おはよう、せかい。



きょうはどうかかのじょがわたしのすべてをおもいだしますように。





.







.







.









.









.









.









.









.







.







.









.









.









.




...。
私は彼女で、彼女は私であると、いつかの彼は告げたのだ。


【ある店番の手記より】

あるひのてがみ→←じゅういちにんめ【11-3】

ラッキーカラー

あずきいろ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す