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◆17.そして、斬り裂いた/伊万里佳弘 ページ20

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ひゅうと風が吹き抜けた。

「…………」

無用心ながら、馬- I型を目下に見下ろす鉄骨の上でなぜこんなことになったのか考えていた。



確か今日は非番だった。
ただ、少しやり残したデスクワークがあったからと顔を出しに行ったら、なんやかんやで他の仕事をやることになって、そして、6時34分くらいに呼ばれたんだったか。
急に鳴り響いたサイレンにはもう、何も思わなかった。

第二班は二つに分かれると言っていたから、大型種の偵察に回った。
建物を無視して無理やり直線距離を突っ切ろうと転々とテレポートしつつ大型種の場所まで移動しようとしていたら、何度目かのテレポートで運悪くレイドロイドが集中しているところに突っ込んだ。

何体かの小型種は迎撃してどうにか立ち回った。
問題は中型種の馬- I型で、こいつは斬りつけただけではその身の内側まで斬ることは不可能だったのだ。

(一介のファインダー如きの身体能力ではやられないということか)

そして、最大距離の10メートルを逆流異能を使って駆け抜けた。そこからは鬼ごっこの始まりだった。
馬型というだけあって、犬型に負けず劣らずのすばやさ。
10メートルと駆けたとしてもまたすぐに動かねば追いつかれる。
そして目の前に見えて来たのは、風化して鉄骨を残すのみとなった廃墟だった。



──……そして、今に至る、と。

結構な歳もいってるし、シーカーでは無いので何度も最大距離を連発するなんて到底不可能。
だが、どうにかしないといけない。

己のシーカーに力を貸し出し続けながらの逆流異能は疲れるんだよ、と誰に言うでもない言葉が口から溢れた。悪態も吐きたい。
俺は動物一般が嫌いなんだよ、お前らもまとめて。

少しして力は戻って来たような気がする。10メートル以内なら、いけるだろう。

痛むはずのない右目がじくじくと痛むような気がする。
見えるはずのない朝焼け色が目に染み付いているような気がした。

「まぁ……やってやろうか」

何もない空中に一歩足を踏み出す。
傾いだその体が落下運動に入る前に逆流異能を発動させ、一瞬を駆けて間抜けな馬面を晒している横を思いっきり鞘で殴った。
脳震盪が起きているであろう間に軸足を蹴飛ばし、運良くバランスを崩したその身に斬りかかる。
体重をかけ、無理やり刃を押し込む。無理なら切っ先をコアのすぐ近くにテレポートさせる。
流石にこの距離──ゼロ距離じゃ、自分自身ではない物体を移動させるとしてもミスをするわけがない。

そして、斬り裂いた。

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七夜(プロフ) - 更新完了しました (2018年5月5日 16時) (レス) id: 468c1cc159 (このIDを非表示/違反報告)
七夜(プロフ) - 更新しますね (2018年5月5日 16時) (レス) id: 468c1cc159 (このIDを非表示/違反報告)
十二月三十一日(プロフ) - すみません、書き込むの忘れてました。編集終了しました。 (2018年5月4日 16時) (レス) id: 70aae954fa (このIDを非表示/違反報告)
十二月三十一日(プロフ) - 編集します。 (2018年5月4日 2時) (レス) id: 70aae954fa (このIDを非表示/違反報告)
十二月三十一日(プロフ) - 更新終わりました。 (2018年4月21日 19時) (レス) id: 70aae954fa (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:十二月三十一日 x他9人 | 作者ホームページ:   
作成日時:2018年4月5日 22時

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