好きです、好きでした。【長月夜】 (ページ1)

今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:7,558 hit

＊9月24日ページ1

＊

「何ぼーっとしてんの？」
「あ、陽……今日だったなぁーって。」

幼馴染である陽に少し笑って話すと呆れた様な顔をされた。
優しい光が差し込む部屋で月を二人で見ながら。

「お前まだ根に持ってんだ？」
「根に持ってるって……言い方悪いなぁ。」

二年前の今日、9月24日。教室で初恋の人＿＿Aに振られた日。
あれからAとは会っていない。
……いや、会おうと思えば会えるんだけど！

そんな勇気など俺には無くて会えていない。
もちろん、本当は会いたい。会って話がしたい。話したいことがたくさんある。
でも告白する以前みたいに軽いノリで話したりとか到底出来ない気がして……。
本当に意気地なしだなぁ。ここまで来るともう自分が憎たらしい。

「お前以外とねちっこいな。二年"も"前だぞ？」
「二年"しか"経ってないでしょ！？」
「いーやいやいや。」

"陽が軽いんだよ"そう言いかけたが辞めた。
その陽が今は少し羨ましいんだから。

「こうなるんだったら、告白しない方が良かったのかな。」
「それはないな。もともと諦めるつもりだったんだろ？」
「そうだけど……」

そう。諦めるつもりだった。
でもなんだか諦めきれずにあっという間に二年経った。

「そんな諦めきれないんだったらいっそまっつんに言ってアドレス教えてもらうか。あいつ連絡とってるらしいぞー。……まぁ、俺もだけど。」
「まっつんに＿＿って、陽も！？」
「おー。ほら。」

陽の手元、携帯電話の画面を見るとはっきりと『A』の文字。知らなかった。
と言うかそれならまっつんではなく陽に聞けばいいじゃないか。

「で、どうする？」
「いー……らない。」

「ふぅん……あそ。んじゃ、頑張れよー。」
「え、ちょ、頑張れって……」

そう言いながら軽く手を振って部屋を出た陽。
今更、何を頑張れと言うんだろう。
自分の手に握った携帯電話を目にして顔を渋らせた。
あの日のことを思い出して複雑な気分に刈られる。Aの顔を思い出すと眩しさに押し潰されそうで目をそっと閉じた。

「……ほんっと、頑固なやつ。」

陽がまだドアの向こう側にいることも知らずに大きなため息と共にベットに倒れ込んだ。
その日はそのまま眠ってしまって後のことは全く覚えていない。